2005年5月16日(月)「しんぶん赤旗」
主張
増大する請負・派遣
放置できない「悲惨な職場」
安い賃金で労働者を工場などに送り込み働かせる請負・派遣労働が増大するばかりです。未来ある若者たちが、モノ扱い同然で使い捨てにされる現状は放置できません。
横行する無法人貸し
フリーターの若者が多く働く業務請負は、人貸し業であり過酷です。賃金は正社員より著しく低く時給千円程度で、寮費やテレビ、洗濯機、ふとんのリース料などを差し引かれ手取りはわずかです。サラ金以上の高金利で金を貸し、給料から天引きする違法金貸しも横行しています。
交代制で昼夜長時間働き、生産の都合で工場を回され、体調不良で休もうとすればどなり込まれるなど、非人間的な扱いがされています。
戦前、労働者を監禁同様に扱い、劣悪な労働条件で働かせた「たこ部屋」の現代版を見るようです。
いまや電機、自動車など生産現場では、働く人の八、九割を請負が占める工場もあります。業務請負は一万社・百万人、年二兆円市場とも推定される規模に達しています。
人貸し請負がなぜ広がるのか。請負大手が「コストダウン等、利益構造の改革につながります」(日研総業)と売り込むように、大企業では利益最大化に好都合だからです。
問われるのは、こんな劣悪な無法請負に依存する大企業の責任です。
企業は、労働者の雇用安定や人権尊重に努める社会的責任があります。日本経団連の企業行動憲章は「安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する」と明記し、差別のない「均等待遇原則の徹底」(実行の手引き)を掲げています。
請負の形であっても、正社員と同じ工場で製品の生産に従事させる大企業には、使用者責任があります。ニコンの派遣社員の過労自殺裁判で東京地裁が、形は請負でも実態は派遣であり、ニコンに使用者責任があると明確に認めたことは重要です。
劣悪な労働を最大限に利用し、利益を吸い上げながら「責任はない」というのは世間では通用しません。
請負労働者に、人たるに値する労働条件を保障する契約内容にすることは、大企業の責任です。
重大なのは、請負の大半が違法な偽装請負だということです。派遣労働などを除き、職業安定法第四四条は人貸しの労働者供給事業を禁止しています。違法な人貸しは、請負元も発注企業も、一年以下の懲役か百万円以下の罰金がつく犯罪です。
東京労働局が偽装請負の疑いのある事業所を調査した結果、請負の八割に違反があり、改善が必要な取引件数は約三万八千件に及びました。違法行為の広がりは深刻です。
利益のためには違法行為も当たり前というのでは、法令順守という最低限の企業倫理にも反します。
政府は監督と指導を徹底し、偽装請負や働く者の権利を侵害する無法を一掃すべきです。偽装請負の場合は、使用する企業が直接、希望者を社員として雇用することです。
人間らしく働く条件を
請負・派遣労働者が、無法を許さず、勇気をもって立ち上がる例が生まれていることは注目されます。トヨタ系列で労働組合を結成した請負労働者は、偽装請負の違法状態を改め、一年以上勤務し入社を希望するもの全員を正社員として採用すること、まともな賃金、労働条件を保障する契約を行うよう求めています。
請負・派遣労働者に人間らしく働く労働条件と均等待遇を実現し、直接雇用の道を広げ、若者たちが希望をもって働けるようにすることは、政府と財界・大企業の責任です。