2005年5月15日(日)「しんぶん赤旗」
ここが知りたい特集 米軍再編
米軍再編 どうなる「基地国家」日本
在日米軍基地には、世界に類例のない異常さがあります。戦後60年間、日本占領の延長として首都圏や沖縄などに広大で強大な基地が置かれ続け、地球規模での「殴り込み」部隊の拠点として強化されてきたからです。日米間で進んでいる在日米軍の再編協議で、これらの基地・部隊はどうなるのでしょうか。
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在日米軍 主な「殴り込み」部隊一覧 | |||||||||||||||
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日米同盟の侵略的大変質
ブッシュ米政権は、イラク戦争に象徴される先制攻撃の戦争に世界のどこへでも迅速に乗り出すために、米軍の「変革」(トランスフォーメーション)と、同盟国を巻き込んでの地球規模での態勢再編を進めています。在日米軍再編をめぐる日米協議もその一環です。狙いは、日米軍事同盟を侵略的なものにいっそう大きく変えることにあります。
在日米軍の再編問題をめぐり、日米両政府は今年二月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、「テロ」「大量破壊兵器」への対抗を日米の「世界における共通の戦略目標」として確認しました。米国の先制攻撃の戦争に日本が参戦していく態勢を整え、「日米同盟」を世界規模に広げようというのです。
そのために米軍と自衛隊が「ともにドクトリン(基本方針)を発展させ、ともに訓練し、合同作戦を行えるようにする」(ファイス米国防次官)ことが狙われています。具体的には、米軍と自衛隊の基地の共同使用を広げ、演習や運用をいっそう一体化しようとしています。
加えて狙われているのが、在日米軍四軍―陸海空軍・海兵隊そろっての「殴り込み」機能=地球規模での展開能力・機動性を高めることと、それを統括する司令部機能を強めることです。
日米両政府は六月にも、米軍と自衛隊の共同作戦計画策定の本格化で合意し、在日米軍基地・部隊の再編に関する最終案を交換すると報じられています。
その一方、在日米軍基地・部隊の強化はすでに進んでいます。
空母2隻の展開も
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米海軍はトランスフォーメーションの一環として、世界のあらゆる地域にすばやく介入するため、「艦隊即応計画」という新しい作戦構想を進めています。十二個保有する空母機動部隊(空母とその他の戦闘艦で構成)も「空母打撃群」と改名しています。
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この計画は「三十日以内に五―六個の空母打撃群を(世界各地に)送り込み、九十日以内に一―二個の空母打撃群をいつでも追加する」(イングランド米海軍長官)というもの。計画に基づく大規模演習「サマーパルス04」も昨年実施し、「七隻の空母が(世界の)五つの戦域で同時に作戦」(同)を展開しました。
この演習には、米空母の唯一の海外母港である横須賀基地(神奈川)の空母キティホーク打撃群も参加しました。同打撃群は二〇〇三年、イラク戦争にも出撃。在日米軍の再編協議では、横須賀基地の「恒久的利用」が「重要課題」(アーミテージ前米国務副長官)とされています。
さらに米海軍は、地球規模での即応態勢をいっそう強めるため、横須賀の空母キティホークに加え、空母もう一隻をハワイかグアムに前進配備しようとしています。
これに伴い、米側は佐世保基地(長崎)を空母寄港地として活用し、岩国基地(山口)に空母艦載機の乗員宿舎を建設するよう日本側に要求。「日本に空母2隻展開も」と報じられています(「東京」五日付)。
このほか、▽空母キティホーク艦載機の最新型(FA18スーパーホーネット戦闘攻撃機)への転換(神奈川・厚木基地)▽通常型の空母キティホークに代わる原子力空母の配備(横須賀)▽「ミサイル防衛」のためのイージス艦増強(同)▽空母艦載機と米海兵隊戦闘攻撃機の統合(岩国)―などの動きも進んでいます。
相次ぐ新基地建設
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米海兵隊は三つの海兵遠征軍から成ります。このうち唯一海外に前方展開しているのが沖縄と岩国基地にいる第三海兵遠征軍です。米海兵隊はまた、特殊作戦能力を持った海兵遠征隊(MEU)を七個隊編成していますが、このうち海外に前進配備しているのも沖縄の第三一海兵遠征隊(31MEU)だけです。
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31MEUは、佐世保基地を母港とする強襲揚陸艦エセックスを中心とする揚陸艦部隊に乗って海外へ出撃します。昨年八月にも、イラクに出撃。ファルージャでの住民虐殺作戦で最前線に立ちました。
米軍はトランスフォーメーションの一環として、MEUと増強された揚陸艦部隊で成る「遠征打撃群」を編成しています。揚陸艦部隊に、ミサイル巡洋艦やミサイル駆逐艦、攻撃型原子力潜水艦などを加え、上陸侵攻能力だけでなく、巡航ミサイルによる対地攻撃能力などを付け加えるというものです。
31MEUと佐世保の揚陸艦部隊はすでに、〇三年春の米豪演習で、横須賀配備のミサイル駆逐艦などとともに遠征打撃群をつくっています。
現在、在日米軍の再編協議では「在沖縄米軍の抑止力維持」が強調されるようになっています。沖縄の普天間基地については、国内・県内への“機能分散案”を検討すると同時に、名護市辺野古沖への代替新基地建設を進めています。新たに強襲揚陸艦や空母の寄港も可能な軍港(浦添市)の建設も狙っています。
佐世保では、揚陸艦のための新しい岸壁建設やエアクッション型上陸用舟艇(LCAC)基地の建設も進んでいます。
世界各地に常時出動
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米空軍はほぼすべての戦力を十個の「航空宇宙遠征軍」(AEF)に分け、交代で地球規模で常時展開態勢をとっています。
三沢基地(青森)のF16戦闘機や嘉手納基地(沖縄)のF15戦闘機などもこれまで、AEFに組み込まれ、対イラク作戦に繰り返し出動。イラク戦争でも空爆などに参加しました。三沢、嘉手納、横田基地(東京)の後方支援要員も、中東に絶え間なく送られています。
在日米軍の再編では当初、在日米空軍部隊を統括する横田の第五空軍司令部のグアム移転なども取りざたされました。しかし、航空自衛隊との一体化を図るため、司令部は存続することになったと報じられています。
座間に新戦闘司令部
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在日米軍の再編問題ではこれまで、アジア太平洋地域での紛争介入を任務とする米陸軍第一軍団司令部(米ワシントン州)のキャンプ座間(神奈川)への移転が協議されてきました。しかし、米議会の「海外基地見直し委員会」の報告書(五日公表)は、「変革された陸軍司令部(UEX)のキャンプ座間への創設」が在日米軍再編の主な柱の一つだと指摘しています。
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「変革された陸軍司令部」とは何か。
米陸軍は現在、態勢・装備を柔軟で軽量なものに変え、地球規模でのすばやい展開が可能な部隊への「変革」(トランスフォーメーション)を進めています。その一つが「ストライカー旅団」の創設です。ストライカーは米陸軍の最新鋭の戦闘装甲車です。これまでの戦闘車両より軽いため、輸送機に積み込んで九十六時間以内に世界中どこへでも派兵可能とされています。同旅団はすでに、イラクで最前線に立っています。
「ストライカー旅団」など緊急展開部隊を指揮・統制するのがUEXです。キャンプ座間にはこの新たな戦闘司令部が置かれることになり、現在は後方支援任務にとどまっている在日米陸軍の性格を大きく変えることになります。
加えてUEXは陸軍部隊だけでなく、他の米軍部隊や多国籍軍を指揮する「統合司令部」としての機能も果たします。キャンプ座間に在日陸海空軍、海兵隊を統括する在日米軍司令部を移転することも検討されてきました。
「UEXの活動は(日米安保条約で定める)極東の範囲内」との報道が相次いでいますが、米陸軍のトランスフォーメーションを担当する同参謀本部のスミス大佐は「UEX(の活動)は地域にしばられない」と明言しています。(軍事専門誌『ジェーン・ディフェンス・ウイークリー』〇四年十二月十五日号)