2005年5月15日(日)「しんぶん赤旗」

都財政2兆円投入 さらに

自・公・民推進の「臨海」開発


 “都政最大の無駄遣いプロジェクト”となっている東京・臨海副都心開発。石原都政は、二兆円もの都財政をつぎ込んだうえ、今後も一兆円の財政を投入する計画です。推進役になっているのは、自民党、公明党、民主党など都議会「オール与党」です。

 (中村圭吾)


土地4割近く未処分

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未処分地が多く残る臨海副都心

 バブル絶頂期に「都民のお金は一円も使わない」とのふれこみで始まった臨海副都心開発。東京ドーム九十四個分、四百四十二ヘクタールの埋め立て地に企業都市をつくるという計画でした。しかし、バブルの崩壊で計画は破たん、いまでは都財政の大きな重荷になっています。

 埋め立て造成地を民間企業に貸し出し、地代でもうけるもくろみが大幅に崩れ、民間企業の進出は、処分対象面積(百三十九ヘクタール)の二割にも及ばない状態です。

 土地利用も、貸し付けから売却へと方針を切り替え、都港湾局幹部を二千社の企業訪問にかりたてるなど、あの手、この手で誘致をはかってきましたが、未処分の土地はまだ四割近く残っています。

 このため、「臨海」会計は毎日一億円の赤字状態に。さらに、金融機関からの借金の元利償還金が八千億円余も残され、これを返すめどがたたない状態に陥りました。

 石原都政はそれでも、開発を継続するため、「臨海」会計と黒字の他の埋立二会計とを統合。「臨海」会計が二会計から借りていた借金三千六百億円を棒引きしたうえ、埋立会計から現物出資の形で提供された土地百六十三ヘクタール(一兆千二百億円)をただ取りしました。「江戸前ハゼの楽園」といわれた旧有明貯木場の埋め立て、臨海地域へのアクセス道路の整備などに使ったお金と合わせ、石原都政のもとで、二兆円の都財政が「臨海」開発につぎ込まれました。

「行くも退くも地獄」

 問題は土地利用だけではありません。都は、ビル事業を行う第三セクターを五社も乱造しましたが、すべて累積損失が資本金を上回る債務超過に陥っています。

 ガラガラのビルを埋めるため、都は、青少年センターをはじめ都施設をわざわざ三セクビルに移転・入居させ、年間約二十一億円(二〇〇三年度決算)の賃料を支払いました。そのうえ、東京テレポートセンターには年間三億円の収益をあげる夢の島マリーナ、年間十億円の利益を生む未利用地の駐車場事業まで移すなど、至れり尽くせりの救済策を講じてきました。

 これまで破たん三セクの延命、救済のために都民の税金、五百億円がつぎこまれました。それにもかかわらず、累積損失はふくらみ続け、再建のめどは一向に立たない状態です。

 日本共産党は、都議会でただ一党、「臨海」開発に最初から反対し、破たんした開発の抜本的見直しを要求。臨海三セクへの税金投入を止め、先送りしてきた破たん処理に踏み切るよう提案してきました。

 二〇〇一年三月、都議会予算特別委員会で日本共産党の渡辺やすのぶ都議(足立区)は「臨海」開発の問題を追及。石原慎太郎都知事は「行くも地獄、退くも地獄なんだ」と思い通りに進まない現状を認めました。

 生活者ネットも賛成

 自民党、公明党、民主党などの各党は、この石原知事を激励し、むだ遣いの「臨海」開発の推進役になってきました。

 自民党は「これを進めていくことが、首都東京の再生につながると確信をいたしております」(二〇〇一年九月二十六日、都議会本会議で松本文明都議・当時=中野区)といい、「昭和の時代から都の総力を挙げて進めてきた東京再生の切り札」(〇二年二月二十六日、同)と賛美。公明党も「今後は臨海再開発の総仕上げに向けて全力で取り組むべきです」(〇二年三月二十五日、予算特別委員会で中嶋義雄都議=世田谷区)と迫ります。

 民主党は「今さら後戻りをするわけにはまいりません。ぜひとも頑張っていただきたい」(〇四年三月十五日、予算特別委員会で樋口裕子都議=中野区)とエールを送りました。

 生活者ネットも臨海副都心の基盤整備予算に賛成し、「(臨海)開発をやめろという立場ではありません」(〇三年十月二十二日、公営企業会計決算特別委員会で大西由紀子都議=北多摩二区)とわざわざ述べています。

 「カジノなどのエンターテインメントの施設」(自民、中屋文孝都議=文京区)、「F1レースでも走らせればいい」(公明、中嶋都議)と、珍提案をする議員までいます。

 共産党の質問評判に

 日本共産党の吉田信夫都議(杉並区)は予算特別委員会(三月二十五日)で、都が三セク救済に五百億円近くを投入する一方、銀行には一千億円もの利子を支払っていることを追及。第三セクター三社が、将来にわたって都から地代減免を受け続ける計画をひそかにつくっていたことを明らかにし、「都民に対しては財政が大変と言いながら、驚くべきこと。見直しこそ都の責務だ」と迫りました。

 この質問の六日後、三セク二社(東京ファッションタウン、タイム二十四)が、東京地裁に民事再生法の適用を申請。

 日本共産党の質問は都庁内で評判になり、都の関係職員から「共産党が主張した通りになりましたね。税金のむだ遣いはやめるべきです」との声があがりました。

 第三セクター 国や地方公共団体が、民間と共同出資して設立した事業体。東京都が「臨海」開発に関連し、ビル事業を行う目的で設立した第三セクターは、東京テレポートセンター、東京臨海副都心建設、竹芝地域開発、東京ファッションタウン、タイム二十四の5社(いずれも株式会社)。



臨海関連第三セクター5社の累積損失  数字の単位=億円
 
資本金 東京都
出資比率
2004年
3月期
債務超過
東京テレポートセンター(株) 176.1 51.5% 235.8 59.7
東京臨海副都心建設(株) 220.0 52.0% 410.7 190.7
竹芝地域開発(株) 150.0 50.5% 250.8 100.8
東京ファッションタウン(株) 172.4 24.6% 277.8 105.4
タイム二十四(株) 24.8 16.1% 156.6 131.8
合   計 743.3  
1331.7 588.4
(臨海三セク都民オンブズマンの提言から)


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