2005年5月14日(土)「しんぶん赤旗」

JR西脱線 背景に企業体質

事故後も“もうけ第一”

民営化で安全まで「合理化」

衆院国交委集中審議 穀田議員の追及


 「稼ぐことがすべてに貫かれている。百七人の犠牲者を出したのに平然としているのに驚きを禁じえない」―JR福知山線脱線事故についての集中審議をおこなった十三日の衆院国土交通委員会。日本共産党の穀田恵二議員は事故の背景にあるJRの企業体質についてJR西日本の垣内剛社長にただしました。


 穀田議員が最初に取り上げたのは、これまでも繰り返されてきた重大事故からどう教訓を学び再発防止に取り組んできたかという問題です。

ダイヤ優先

 京都駅での車両の異常接近(二〇〇二年)や神戸線での死傷事故(二〇〇四年)では事故調査委員会や裁判所から、定時運転確保、ダイヤどおりの運行の優先が原因と指摘されました。しかし、その指摘は安全運行に生かされませんでした。それをいっそう強要し、逆行させるダイヤ改正をおこなってきたのがJR西日本です。

 背景にあるのはJRの“もうけ第一”“安全は二の次”という姿勢です。穀田氏が示したのはJR大阪支社長方針。その第一項にあるのは「稼ぐ」であり、安全は二番目になっています。

 穀田氏 大阪支社の支社長方針は撤回させたのか。

 垣内社長 民間企業であるから稼ぐことはもちろん大事だが、鉄道の場合は安全輸送がなければ稼げないのは当然。そういうことがこの方針になった。

 方針は撤回させていないことが明らかになりました。穀田氏は「事故が起きても稼ぐことが第一というのが支社の方針だとして平然としている姿勢に驚きを禁じえない」と厳しく批判しました。

技師は削減

 実際の安全対策はどうなっているのか。例えば新型ATS―P(自動列車停止装置)の設置工事費は二〇〇〇年の十九億円から〇一年には二億円に激減。事故の起きた福知山線には設置されていませんでした。

 穀田 なぜ福知山線への設置を後回しにしたのか。

 垣内 線区の規模などによってデコボコができる。工事には特殊な専門的技能が必要でそういう能力が対応できるかも総合的に勘案して決めている。

 技師の不足で設置が遅れていることを認めたものの、技師を減らしてきた責任にはふれませんでした。穀田氏は「費用の問題をいうなら、いまやっている大阪駅の改修を見直してでもATSを全部設置するくらいのことをしても当然だ」と強調しました。

命令と服従

 事故列車に乗り合わせた二人の運転士の行動、当日のボウリング、宴会…。人間としてとうてい許されないJR職員の行動は、大きな社会的批判を呼びました。

 しかしその背景には、上司にものも言えない、「命令と服従」の風土があることも浮かびあがっています。

 穀田氏が、その原因をどう考えるかをただしたのに対し、垣内氏は、「国鉄の時代と違ってしっかり仕事をしてきた。指揮命令系統についてはそれなりにきちんとしたことができた」というとんでもない認識を示しました。

 穀田氏は、「そうではない。国鉄分割・民営化で人の合理化をすすめ安全まで合理化してしまった。指揮命令系統ができたというが、命令と服従だけが進んだということだ」と批判しました。


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