2005年5月12日(木)「しんぶん赤旗」

主張

イラクで日本人拘束

戦争「民営化」と悲惨な現実


 イラクで、日本人が武装勢力に拘束される事件が、また起きました。 武装勢力の声明文は、米軍基地から出た車列の一団をイラク西部のヒートで待ち伏せ攻撃し、激しい戦闘の後、重傷を負った斎藤昭彦さんを拘束したとしています。

 斎藤さんを雇っていた英国系の警備会社は、斎藤さんがイラクで行方不明になったことを、外務省に報告してきました。負傷したとされる斎藤さんの安否が気づかわれます。拘束されているならすみやかに解放されるよう、政府には最大限の努力が求められます。

占領支配に組みこむ

 日本政府は、「危険だからイラクに行かないように」と国民によびかけていますが、斎藤さんの会社は、イラク駐留米軍の下請けをしている軍事会社です。イラクが戦争状態で危険だからこそ「仕事」があり、斎藤さんは“戦争請負”業務に派遣されました。

 米軍は軍事会社に、米軍基地や要人、企業、石油関連施設の警備、兵たん物資輸送などを請け負わせて、戦争・占領の仕組みに組みこんでいます。不法なイラク侵略戦争の実態が明らかになり、米軍は兵士の募集に苦労しています。その不足分を軍事会社に穴埋めさせ、米軍は攻撃に集中。イラクの人々の犠牲を拡大しています。また、戦争状態が続くほどもうかる軍事会社の増大はそれ自体、戦争継続の圧力要因になります。

 軍事会社を使っての戦争「民営化」は、戦争の悲惨さを拡大するものでしかありません。

 イラクでは、ようやく四月末に移行政府ができたものの、その後、治安が極度に悪化しています。武装勢力による大規模な攻撃や自爆テロが続発し、十日間で死者三百人以上は、今年年頭の月間の死者数に匹敵します。

 米軍は数日来、イラク西部で大規模な掃討作戦を行い、そのなかで米兵十四人が死亡し、一昨年三月のイラク侵攻開始以来の米兵死者数は、千六百人を超えました。大半が元軍人で二万人といわれるイラクに派遣された軍事会社要員の死者も、二百人を超えています。

 イラク戦争開始以来のイラクの人々の犠牲は、少なくとも数万。十万を超すという推計もあります。

 イラク移行政府には未定の閣僚ポストも残され、その人事を決める議会に議員の半数も集まらないという状態もあります。一月の暫定国民議会選挙に参加した人々は、自分たちの手にイラクの政治を取り戻し、治安の回復と暮らしの安定に前進したいという願いを表明していました。しかし、政府の発足が遅れ、治安も生活も良くならない現実に、失望が広がっています。

 今回の「拘束」は、こういうイラクの厳しい現実の中で起きました。

米軍撤退見通し明確に

 イラクの人々の多くは、テロ攻撃を批判しています。同時に、米軍の占領支配が混乱と治安悪化の最大の原因だとの思いを強くしています。

 イラクの人々が内戦の危機を回避し、自分たちのことは自分たちで決める主権を実質的に行使できる状況をつくり出さなければなりません。そのためには、米軍占領支配体制がいつまでも続くことがあってはなりません。米軍とともに派兵した各国からは、撤退が相次いでいます。

 侵略戦争に続く二年の占領支配で、今日に至るイラク情勢悪化の根本原因をつくり出したのは、米軍です。その撤退見通しを明確にして、イラク情勢を打開すべきです。


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