2005年5月10日(火)「しんぶん赤旗」
ナチスの与えた苦しみ
「記憶風化させない」
ドイツ大統領が演説
第2次大戦終結記念日
【ベルリン=片岡正明】ドイツで第二次世界大戦終結とナチスからの解放記念日にあたる八日、ケーラー大統領がベルリンの連邦議会で演説し、「われわれには(ナチス・ドイツが与えた)すべての苦しみと苦しみの原因について記憶を風化させない責任がある。苦しみを二度と起こさないようにしなければならない。責任は終わりのないものだ」と訴えました。
大統領はナチスの与えた「災いは今も影響を及ぼし続けている」と強調、「殺された両親を持つ娘や息子は今も嘆いており、当時の苦痛の体験を持つ人々は今も苦しんでいる」と語りました。
また「われわれドイツ人は、ドイツが引き起こした第二次世界大戦とホロコーストを恐ろしさと恥をもって振り返る。悪魔のようなエネルギーで殺された六百万のユダヤ人を忘れはしない」と述べました。
ティールゼ連邦議会議長は「暴力による支配と戦争の犠牲者への記憶を保つことは、われわれに今日の民主主義を擁護し、積極的な平和政策への義務を課す」と呼びかけました。
ベルリンでは同日、極右のドイツ国家民主党(NPD)が「解放六十年のウソと罪の崇拝を終わらせよ」とのスローガンを掲げデモを計画。三千人が集まりましたが、数万人の反ナチ・デモに囲まれました。
反ナチ・デモはドイツ労働組合総同盟(DGB)、民主的社会主義党(PDS)や平和左翼組織がそれぞれ呼びかけたもので、「茶色の瓶(極右・ネオナチ)はゴミ箱に」などのプラカードを掲げました。両デモ隊の中に割って入った警官隊によってNPDのデモは中止させられました。
反ナチ・デモに参加したトリッティン環境相は「歴史の中のもっとも多数の大量殺人を賛美しようとするナチスに、ドイツで決して重要な役割を果たさせてはならない」と語りました。
ドイツ連邦議会と連邦参議院が「民主主義の日」と決めた五月七日と八日、各地で式典やデモ、さまざまな催しがありました。中央式典はベルリンのブランデンブルク門の前で開催され、強制収容所の元収容者やレジスタンスの闘士が体験を語ったほか、民主主義のためのコンサートなどが開かれました。
親子三人で訪れたラルフさん(39)は「とても大切な集会だから家族三人できました。昨日も反ファシズムの『光の鎖行動』に参加しました」と語っていました。