2005年5月10日(火)「しんぶん赤旗」

主張

カード犯罪と銀行

偽造も盗難も補償してこそ


 銀行のキャッシュカードの偽造や盗難による預金の不正払い戻しに対し、全国銀行協会がようやく偽造の被害は補償する方針を示しました。

 といっても、盗難・紛失による被害は対象にしようとしていません。預金者の保護は、銀行の責任ではありませんか。

カードの被害は深刻

 全銀協は、偽造カードの使用による被害は、本人に重大な過失がなければ銀行が全額補償し、過失の立証は銀行の責任とする方向です。

 ただし、被害補償はあくまで銀行の約款の改定で対応しようとしています。銀行の自主的な対応にまかせれば、各銀行や事件によってばらつきが出て、不十分な対応に終わる恐れがあります。被害補償の法的なルールが必要です。

 銀行が、カードの盗難はあくまで預金者の過失だとして、責任をとろうとしていないことは見過ごせません。

 盗難カードの被害は、〇三年度で十七億三千百万円にのぼり前年度より四億円近く増え、偽造カードの被害を上回ります。盗難通帳の被害も〇四年で五億千百万円に達します。

 カード犯罪は巧妙になっています。カードを盗まれたことに気づかないでいる間に、多額の預金を払い戻しされた例もあります。被害者にとって、カードの偽造と盗難による被害に、どれほどの違いがあるでしょうか。

 大切な預金を、確実な本人確認をしないで、何の権限もない第三者に払い出した責任は銀行にあります。

 もともとキャッシュカードは、カードと暗証番号だけで預金を引き出せるだけに、便利さの一方で犯罪に悪用される危険をもっていました。それを防ぐ対策をとるべきなのに、銀行は、安全よりも利便性を優先してきました。

 カード犯罪が多発しながら、預金者保護の対策が遅れたのは、被害を預金者に押しつけ、銀行はまったく損害を受けないからです。

 老後の預金をはじめ国民の大切な資金を預かる銀行には、預金者保護の重大な使命があります。これまで不正防止と被害補償の対策をとらず、放置してきた責任が問われます。

 伊藤達也金融相はようやく、盗難カードの補償についても、金融庁の偽造カード問題の研究会で議論することを求めました。

 世界の主要国では、カードの偽造も盗難・紛失も区別せず補償するルールがあります。金融庁の海外調査報告でもそれは明らかです。

 盗難・紛失の場合、ドイツ、カナダ、オーストラリアは本人の負担はありません。アメリカ、イギリス、フランスは一定の本人負担だけで補償されます(アメリカは五十ドル=約五千三百円)。いずれも重過失がない場合ですが、過失の立証は銀行側の責任です。

 日本でも、クレジットカードは偽造も盗難も補償しており、銀行が補償をしない道理はありません。

 銀行が、盗まれたカードや通帳で、権限もない人に預金を払い戻しながら、責任も負わないのでは、銀行と金融システムへの信頼が揺らぎます。不正防止の対策にも本腰が入りません。不正防止や被害補償の仕組みをつくってこそ、国民の信頼を高めることができます。

預金者保護のルールを

 いま必要なのは、カードの偽造と盗難・紛失、通帳盗難などによって被害を受けた預金者を救済することです。そのために、預金者保護の法的な措置をとることです。


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