2005年5月10日(火)「しんぶん赤旗」
ネスレ 遠隔地配転無効
家族介護の2人勝訴
神戸地裁 休業法に則し初判断
大手食品メーカー、ネスレジャパンホールディングによる不当配転の撤回などを、ネスレ姫路工場(兵庫県)の労働者が求めていた裁判で九日、神戸地裁姫路支部は、原告全面勝利の判決をいい渡しました。
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ネスレは二〇〇三年五月、姫路工場のギフトボックス職場の閉鎖を一方的に発表。六十人の労働者に茨城県霞ケ浦工場への転勤か退職かを迫り、四十九人が退職、九人が転勤に追いこまれました。
ネッスル日本労働組合の組合員で病身の妻を介護する五十五歳の男性と、同じく母親を介護する四十九歳の男性(後に同労組に加入)は、退職にも遠隔地転勤にも応じられず、姫路工場にとどまらせてほしいと会社に要望。しかし会社側は霞ケ浦工場への転勤を命じました。二人は、同年六月から姫路工場への立ち入りを認められなくなり、同年十一月、提訴しました。この二年間、毎朝姫路工場に赴き、就労を要求してたたかっています。
判決は、妻や母親の症状、介護の必要性などから、「配転命令によって受ける不利益が通常甘受すべき程度を著しく超える」「配転命令権の乱用にあたる」と会社側を断罪。二人への転勤命令は無効とし、賃金の支払いを命じました。
また、労働者を配転させる場合、子どもの養育や家族の介護の状況を事業主が配慮する義務を定めた育児・介護休業法二六条との関係で、四十九歳男性については、同法が求める配慮が不十分だったと会社側を批判しました。
弁護団は、配転の是非を争う裁判で、同法にもとづいて介護の問題を判断した判決は初めてといいます。
判決後、記者会見した原告は「すぐに妻に電話したら、非常に喜んでいた。会社は控訴せずに、明日から仕事をさせてほしい」(五十五歳男性)、「介護の大変さを裁判所に理解していただいて、うれしく思っています」(四十九歳男性)と、喜びを語りました。