2005年5月9日(月)「しんぶん赤旗」
米軍再編でどうなる 座間シンポ
3氏の発言(要旨)
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神奈川県座間市内で七日に開かれたシンポジウム「米軍再編で世界と日本、神奈川はどうなる」(日本共産党神奈川県委員会など主催)は、「私たちが頑張れば基地をなくすことができると感じた」など、参加者から感銘の声が多数寄せられました。パネリストとして出席した浅井基文・前明治学院大学教授、沖縄県宜野湾市の伊波洋一市長、日本共産党の志位和夫委員長の発言(要旨)を紹介します。
先制攻撃 抵抗強まる
米国の世界戦略については、ブッシュ政権の先制攻撃戦略とその延長線上にある世界秩序構想をどのように考えるのかという問題があります。
先制攻撃という考え方自体は、実質的には米国の対外政策において一貫して追求されてきました。ただ、国連憲章で戦争が禁止され、先制攻撃が違法化されているもとで、それを公然と実行したという点でブッシュ政権は際立っています。
ブッシュ政権は、これまでの対ソ連の「脅威立脚」型戦略から、ソ連なきあとの膨大な軍事力の維持を正当化するため、「能力立脚」型戦略に転換しました。だれが攻めてくるか分からないが、何が起こるか分からないからどのような事態にも対処できるようにするという戦略です。
とはいえ、これでは何が米国の脅威になりうるのかという点について説明がつかない。その点を「解決」したのが九・一一テロでした。しかしテロだけでは(説明が)弱い。そこで、テロリストたちと連合するごろつき国家を脅威認識の対象として据えた。その具体的な実践としてイラク戦争は行われました。
米国内では、早くも「イラク後」が議論されるようになっています。イランや北朝鮮のような圧政国家を必要な場合には力をもってしてでも「民主化」し、国際秩序を「民主化」するという構想への展開です。
しかし、ブッシュ政権の先制攻撃戦略には、すでに多くの制約要因が出てきています。
一つは、イラク戦争の泥沼化です。出口を設定しないで始めたイラク戦争の根本的な欠陥が露呈してきています。あるいは、米国に押し流される日本のメディアの論調からは分かりませんが、ブッシュ政権の攻撃的な思考、危険な戦略に米国内でも国際的にも警戒感が高まっています。
ブッシュ流の「民主化」構想についても、致命的な問題があります。イラクやアフガニスタンの捕虜に対する反人道的な扱いは、ブッシュ流「民主主義」の本質を露呈し、大きな米国批判として顕在化しています。
ブッシュ政権の先制攻撃戦略は危険性が強いが、国際的にみれば、非常に抵抗力が強まっています。未来は決して暗くはないのです。
基地反対 首長先頭に
沖縄県宜野湾市長 伊波洋一さん
沖縄の米軍基地撤去のたたかいは戦後ずっと続いており、今も嘉手納基地や普天間基地の爆音訴訟、都市型訓練施設の建設に反対する住民の座り込みが続いています。辺野古の海の基地建設では一年以上も毎日、地元住民、県民が反対の座り込みを続けています。
私がここに参加することを知った方から一つのブックレットをいただきました。沖縄人民党の委員長で、その後、共産党の国会議員になられた瀬長亀次郎さんを紹介するものです。これを読んでも、沖縄の反基地運動は一九四五年の沖縄戦とその後の米軍占領下で軍事支配が続く中で、ずっと受け継がれたものだということが分かります。
沖縄の復帰前、瀬長さんは那覇市長をやり、米軍と対峙(たいじ)した。復帰後も、常に市町村長が市町村民の先頭に立って反基地運動に取り組んできました。そういう自治体ぐるみの運動が継承され、今日まで来ています。私も普天間飛行場の即時閉鎖と全面返還に向け、市民の先頭に立って頑張っていきたい。
市町村長が反基地運動の先頭に立たなければならない理由は、米軍基地が住民の人権を大きく侵害することが、わが国政府のもとで許されているからです。厚木基地のNLP(夜間離着陸訓練)が住民に大きな被害を与えても、国として何の対処もしないというのは他の国々ではあり得ない、極めて異例なことなのではないでしょうか。
去年、ワシントンを訪ねた時、米国防総省の担当者は、ラムズフェルド国防長官の「歓迎されない所には基地は置かない」との発言はその通りだと言いました。ならば、私たちは歓迎しないものは歓迎しないと表明することが極めて大事です。
昨日(六日)、(米議会の)海外基地見直し委員会が普天間飛行場は嘉手納や岩国に統合しろという勧告を出しましたが、私たちの望むところではありません。辺野古への(代替)基地建設も何の解決にもなりません。海兵隊は沖縄からも日本全体からも撤去させなければなりません。
沖縄では、戦争から六十年の節目の年に、米軍という衣を脱ぎ去って、新しい衣を身に着けたいという思いが県民の中に生まれていると思っています。これからも一つひとつの基地を脱ぎ去る取り組みを継続していきたいと思っています。
「米軍再編」の名での基地強化を許さない
日本共産党委員長 志位和夫さん
もともと日本の米軍基地は、世界に類例のない異常なものです。首都圏の人口密集地に横田、厚木など巨大基地があること、世界で唯一、空母と海兵隊という「殴り込み」専門の部隊を常駐させていることなどは、まったく異常なことです。
いま「米軍再編」の名でおこなわれていることは、在日米軍四軍――陸海空、海兵隊そろっての「殴り込み」態勢の強化、それを統括する司令部機能の強化という恐るべき方向です。
米海軍は、太平洋地域に二隻の空母を前方展開する方針で、イラク戦争に横須賀から空母キティホークが出撃した後は、空母カールビンソンが日本海に出撃し、横須賀への寄港を繰り返すなど、事実上の「二隻」態勢がはじまっています。
米海兵隊は、海軍と一体化して遠征打撃群を結成しています。佐世保を事実上の母港とする強襲揚陸艦エセックスに、沖縄の第三一海兵遠征部隊をのせて、イラク戦争に出撃しました。
米空軍は、三沢、嘉手納の航空部隊が一体になって、航空宇宙遠征軍をつくり、これもイラク戦争でバグダッド空爆などをおこないました。
こうしたもとでキャンプ座間に米陸軍第一軍団司令部が移設されることは、二つの重大な意味をもっています。
第一に、米陸軍も「再編」の過程にあり、「ストライカー旅団戦闘団」という「殴り込み」部隊を編成しつつある。その司令部が、座間にくることを意味します。
第二に、座間にくる司令部は、在日米陸軍の司令部だけでなく、在日米軍全体の司令部となり、陸海空、海兵隊の「殴り込み」部隊の全体を統括する権限が強化される危険性があります。
どうすれば、この動きをくいとめ、基地のない日本をつくれるか。
一つは、「新しい基地をつくることは、基地を永久化することであり、それは許せない」の一点で立場の違いをこえたたたかいを広げることです。沖縄でも、神奈川でも、自治体あげてのたたかいが前進していますが、私たちも力をあわせてたたかいたい。
いま一つ、根本的な解決策は、日米安保条約をなくすことにあります。世界をみると、軍事同盟の解体、機能不全、弱体化がすすみ、仮想敵をもたない平和の共同体が広がっています。軍事同盟と軍事基地強化に熱中しているのは日本だけです。私たちのたたかいは、世界の大きな流れにそった未来あるものです。