2005年5月9日(月)「しんぶん赤旗」
新型ATS
技師不足で設置遅れ
JR西日本が認める
福知山線で脱線事故を起こしたJR西日本は、事故防止に役立つ新型の列車自動停止装置(ATS―P)の設置が他社にくらべても遅れ、全体の約8%しかカバーしていませんが、その背景に社内の技術者不足があったことが八日までにわかりました。
JR西日本のATS―P設置工事費は二〇〇一年度から大幅に減りました。一九九八年度から二〇〇〇年度には十六億―二十一億円で推移していたのに、〇一年度は二億円、〇三年度は一億円に激減しています。
その理由についてJR西日本は、「計画路線の車両への装置の設置がほぼ終了したから」としています。しかし、ATS―Pは車両に積載する装置だけでなく、地上の線路側にも装置の敷設が必要で、これがないと機能しません。地上部分の設置は計画よりも遅れ、事故のおきた福知山線でも設置されずに事故列車の制限速度大幅超過を抑制できませんでした。
ATS―Pの地上装置を設置する実際の工事は同社の子会社など下請け会社に発注しますが、工事の設計は安全上の問題があって同社の電気部に所属する設計技術者がおこないます。しかし、JR西日本は、国鉄分割・民営化以降社員数を大幅に減らしており、設計技術者も例外ではありません。
JR西日本は本紙の取材にたいし「敷設に必要な技術を持った社内の設計技術者に限りがあるといった能力上の問題がある」とのべ、技術者不足が遅れの背景にあったことを認めました。