2005年5月7日(土)「しんぶん赤旗」

BSE

全頭検査緩和を答申

食品安全委 公募意見は反対7割


 内閣府の食品安全委員会は六日、BSE(牛海綿状脳症)の全頭検査緩和につながる答申案について意見公募で約七割の反対意見を受けながら原案どおり、厚生労働省と農水省に答申することを正式決定しました。政府は国民の理解を得ないまま今月下旬にも米国産牛肉輸入再開に向けた条件について同委員会に諮問する方針です。


 寺田雅昭委員長は「七割の人が不安に感じている」と認め、消費者の理解を得られるよう意見交換会の開催などを両省に求める異例の文書を答申に添付しました。

 食品安全基本法に定められた手続きである答申案にたいする意見公募(パブリックコメント)では千二百五十通が提出されました。そのうち、七割が生後二十カ月以下を検査除外する答申案に反対し、全頭検査継続を求めるものでした。

 「国民の理解が得られないまま検査の緩和を急ぐ必要性はまったくない」「特定危険部位を完全に除去できるかどうかはまだ疑問であるから、その方法が確立してから見直しを」「若年齢牛での検査ができず、検査感度を改良する技術開発にも支障が出て、緩和は時期尚早」などの意見が続出しました。

 これにたいし、吉川泰弘専門調査会座長は「意見の多くはリスク管理にかかわるもの」「再審議する必要はない」とし、リスク管理官庁である両省に伝えただけでした。

 答申をうけ、両省は全頭検査緩和などをもりこんだ省令改定について、今後四週間、国民から意見公募し、下旬に省令を改定する見とおし。また、米国産牛肉の輸入再開についても十三日から消費者との意見交換会を全国九カ所で開催し、そのうえで食品安全委員会へ輸入再開条件を諮問する方針です。政府は米国に担当者を派遣し、実態を調査、諮問のさいその内容も報告するとしています。


解説

米国の要求を優先するのか

 答申は生後二十カ月以下の牛を全頭検査から除外しても、「食品健康影響(リスク)は、非常に低いレベルの増加にとどまる」という内容です。

 しかし、これには審議した専門調査会の委員からも疑問や批判が出ています。(1)輸入配合飼料や危険部位除去対策の実効性が確認された後に緩和するのが合理的判断だ(2)二十カ月以下の牛の検査成績の評価ができなくなる――というふたつの「批判的意見に留意すべき」という付帯意見さえつけられました。

 政府は、全頭検査緩和を行った後も都道府県が自主的に実施する全頭検査への補助を三年間継続します。これではまさにダブルスタンダード(二重基準)です。

 国民の声を優先するのか、米国の要求を優先するのか。政府の姿勢が厳しく問われます。

 (宇野龍彦)


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