2005年5月3日(火)「しんぶん赤旗」

JR脱線事故1週間 今も眠れぬ日々

叫び声にうなされ

1両目から生還 学生語る


 「JR(西日本)は犠牲者に安心感と落ち着かせてくれる環境をつくっていない」。兵庫県尼崎市のJR福知山線で起きた快速電車脱線事故で一両目に乗っていて奇跡的に助かった川西市の同志社大生(19)は事故から一週間になる二日の今も眠れぬ日が続いています。

 「助けて」と叫ぶ声にうなされて深夜に跳び起きることが続いています。「亡くなった人は怒りを語ることもできない。生き残ったものの使命として語る責任がある」と心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむなかで匿名を条件に証言してくれた大学生。「あの日、あの時間、一人の学生として普通に学校に行く時間でした」といいます。

 いつものように川西市のJR川西池田駅から同志社前駅に向かったのです。異変は電車が伊丹駅に停車するときから始まりました。四十メートルオーバーランし、ドアが開きませんでした。バックし、遅れての出発。福知山線を高校時代から通学電車として利用してきた大学生にとって「オーバーランは、しばしばあったのであまり気にはしなかった」といいます。

 異常に速いスピード。ガ、ガー、ドーン。降るガラスの雨。気付いたときには真っ暗。「今死ねない」。母や父の顔が浮かび、自力ではい出しました。

 「昨日は生き残った方も、力尽きて亡くなり、犠牲者は百七人。僕や、生き残った人たちも心に深い傷を負い、心身の自由を奪われた人もいます」という大学生。人生設計全体が変えられた犠牲者たちを代弁して語ります。

 「犠牲者を『被災者』と発言したことなど、JRは私たちを安心させてくれない。私たちは自然災害にあったんじゃないんです。利益を優先した人災。犠牲になったんです。逆なでばかりで心の傷に塩を塗る。苦悩の未来を無理やり背おわされた」

 けいついねんざとともに、地獄を見た恐怖と「自分だけ生き残って、乗り合わせた人を助けられなかった」という自責の念にさいなまれます。

 「大学では人間の心にかかわる学問を専攻しています。一歩間違えば死んでいた。人生観を変えるほどの体験を語り継ぐ」


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