2005年5月3日(火)「しんぶん赤旗」

労働現場を人間らしく

各国でメーデー


 経済のグローバル化(地球規模化)、国際競争力強化の名のもとに、労働者の権利・生活条件を掘り崩そうとする動きをはね返そう―。一日、世界各地のメーデーでは、「週三十五時間労働制への攻撃を許すな」「労働時間短縮、残業なしに雇用増を」「不安定雇用を強いるな」などと要求する声があがりました。また「イラク戦争反対、米軍撤退」の唱和が響き、第二次世界大戦終結六十周年を反映して「ファシズム反対」のスローガンが掲げられました。


妥当な賃金を 35時間守れ

パリ

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1日、パリで「賃金、雇用、労働時間、労働法のために行動しよう」の横断幕を持って行進する人々(浅田信幸撮影)

 【パリ=浅田信幸】フランスのメーデーは最有力労組の労働総同盟(CGT)が中心となり、「賃金、雇用」要求を中心スローガンに全国百三十カ所でデモ行進がおこなわれました。

 パリでは快晴に恵まれ春たけなわの温和な気候の下、一万五千人が「質の高い雇用、妥当な賃金、公共サービスを全員に保障せよ」などの横断幕や組合旗を持って共和国広場からナシオン広場まで左翼勢力の恒例のデモコースを行進しました。

 今年のメーデーは、週労働時間三十五時間の緩和反対、賃上げ、雇用促進など一月以来の要求闘争の発展を踏まえ、今後の賃金交渉に備えることが第一に強調されました。

 同時に、欧州連合(EU)の欧州憲法批准国民投票を一カ月後に控え大々的なキャンペーンが展開されているさなかでもあり、そのプラカードや横断幕も目立ったことが大きな特徴でした。

 欧州労連(ETUC)が欧州憲法支持を打ち出したのに反して、メーデー行進に取り組んだ仏労組は基本的に「欧州憲法反対」の立場。「憲法はあなたの健康を害します」「私はノン(ノー)だ」「欧州を愛するから、ノンを投じる」などなど、多くのデモ参加者が思い思いのスローガンを書いたプラカードを掲げて行進しました。

 年金生活者のメルセデス氏(67)は「毎年メーデーデモには参加しているが、今年は本当に重要だ。ノンと投票することで、これまでつくられてきたような欧州を拒否する可能性をもつのだから」と語っていました。


公正と尊厳掲げ連帯

ドイツ

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1日、ベルリン市内をゆくメーデー行進(片岡正明撮影)

 【ベルリン=片岡正明】ドイツのメーデーは中央集会の南部マンハイムをはじめ、首都ベルリン、フランクフルト、ミュンヘン、エッセン、コトブスなど各地でドイツ労働組合総同盟(DGB)などのデモ・集会が開かれ、数万人が参加しました。

 今年のテーマは「労働者を数字やコスト要因とだけ見るな。労働者には尊厳がある」。背景には昨年来のドイツ企業の労働者攻撃があります。

 ドイツでは一部の大企業が記録的な利益を更新している一方で、国際競争力強化を理由に、週労働時間三十五時間(金属産業労働者)など労働者が築いてきた権利を攻撃し、賃下げか労働時間延長をのまなければ工場の海外移転をするとの脅しをかけています。

 このため、国内雇用は停滞し、失業者も五百万人を超えました。また、企業の中で労働者が労働条件などでの共同決定権を持つことにも財界や保守野党は否定の姿勢を強めています。

 マンハイムの中央集会で、ゾンマーDGB議長は「企業の中での労働者の共同決定権が脅かされているが、この権利こそ労働現場を人間らしくさせてきた。企業の脅しやグローバル(地球規模)化した資本主義と徹底してたたかい、社会的公正と人間の尊厳のために連帯していこう」と訴えました。

 ベルリンではブランデンブルク門前から市内中心部を「社会保障削減の代わりに労働時間を少なくし残業なしで職をつくれ」「賃金ダンピング反対」などのプラカードや横断幕を掲げ約五千人がデモ行進しました。

 シュレーダー首相の鼻を長くした絵のある手製のプラカードをもっていたアーヒムさん(62)は「シュレーダーはうそつきという意味。私は前の会社が倒産してから十四年間も失業者だった。失業手当の削減や年金の凍結など腹の立つことばかり。シュレーダー首相は辞任すべきだ」と語りました。

 ダイムラークライスラーのベルリン工場で働くマーティン・フランクさん(24)は「ダイムラークライスラーは去年、南ドイツの工場で四十時間以上働くよう要求してきた。大企業は賃下げや労働時間延長に応じないと工場移転をすると脅してくるが、市民に労働者の現状を広く政治的に理解してもらい、一緒にたたかいたい」と話していました。


鉄道民営化に批判も

 【ロンドン=西尾正哉】ロンドンのメーデーでは一日、数千人が参加し市内を行進しました。デモの終着地点のトラファルガー広場では「ファシズムに反対して団結しよう」と銘打ったロックコンサートが開催されました。参加者は、「年金改悪反対」「ブレア首相はうそつきだ」などと書いたプラカードを持って行進しました。

 参加者の一人、鉄道海員組合(RMT)の組合員で地下鉄労働者のジェラード・ビッカーズさんは、鉄道の民営化をこれ以上進めず、再国有化を訴えてメーデーに参加しました。

 英国では二〇〇二年五月に七人の死者を出す脱線事故、〇三年一月にロンドン地下鉄で脱線事故が起きるなど、鉄道サービスが民営化されたもとで、安全性は労働者・国民の切実な要求の一つとなっています。

 ビッカーズさんは、地下鉄、鉄道の再国有化こそ国民の税金を節約し安全性も高めると強調し、目前に迫る総選挙でも「民営化に反対する候補者の応援をする」と語りました。

 メーデーの行進には、労働組合だけでなく、ロンドンで活動するイランやトルコなどの政治組織も多数動員し国際色の豊かなものになりました。


大統領選挙も視野に

メキシコ

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憲法広場でおこなわれたメーデー集会=1日、メキシコ市(松島良尚撮影)

 【メキシコ市=松島良尚】「メキシコの空を売り渡すな」の声が響き渡りました。「政府は米系資本を国内路線に参入させようとしている」とメキシコパイロット組合連合のアルフレッドさん。ユニフォームが目立ちます。

 メキシコ市の憲法広場でおこなわれたメーデー集会には、同国第二の労働組合センター・全国労働者同盟(UNT)などから十万人以上が集結。期限付き短期雇用の認可や解雇規制の緩和などをねらいとする労働法「改革」への反対が中心テーマです。

 「オブラドル・メキシコ市市長支持」というプラカードもかかげられていました。公共事業にかかわる裁判所命令を無視したとする同市長の免責特権はく奪問題はいま、国民最大の関心事。来年の大統領選挙から市長を排除するためとみられています。

 市長の免責特権はく奪と労働法「改革」。これら二つをめぐり、市長の首を切りたい与党・国民行動党が労働法改悪で前政権党・制度的革命党の主張を取り入れるという密約が交わされているのではないか―日本共産党第二十三回大会に民主革命党代表として参加したフランコ下院議員が国会で追及しています。


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