2005年5月2日(月)「しんぶん赤旗」

集客競い過密ダイヤ

遅延・回復運転が常態化

制限速度ギリギリ強いる

JR西 脱線 


 JR福知山線の脱線事故から二日で一週間。事故の大きな要因として、高速・超過密のダイヤ編成が問題になっています。JR西日本は、並走する阪急電鉄宝塚線より速い快速などをラッシュ時に三―五分間隔で走らせ、安全対策も不十分なまま無理を重ねてきました。国鉄分割・民営化後に強いられた私鉄との激しい競争。そのなかで生まれた超過密ダイヤの実態は―。

 JRでは一般に公開している時刻表のほかに、乗務員が持つ秒単位の時刻表があり、駅間の所要時間(運転時分)が定められています。脱線事故を起こした宝塚発午前九時三分の列車は、事故現場の約一キロ手前の塚口駅(通過駅)と、次の尼崎駅(停車駅)の間を三分ちょうどで走るよう定められていました。これについて、ある運転士はこう証言します。

余裕なくなる

 「以前は塚口―尼崎間は九十五キロで走れば間に合う比較的余裕のある区間でした。ダイヤ改正でいまはその余裕がなくなり、百十キロを超えるスピードを出さないと間に合わなくなりました。事故列車はその区間で遅延を取り戻そうとしたため、スピードを出しすぎブレーキをかけるタイミングが遅くなったのではないか」

 事故列車の運転士は事故を起こす手前の伊丹駅で、四十メートルのオーバーランをしていました。別のベテラン運転士はこう指摘します。「伊丹駅はオーバーランしやすい駅。北伊丹駅から伊丹駅にかけて直線が続いていて高速運転が可能です。遅延があった場合、この直線で取り戻そうとして、百十キロから制限速度いっぱいの百二十キロまで出す。だから伊丹駅の手前でのブレーキ操作を誤るとオーバーランにつながりやすい」

増発繰り返す

 運転士に高速運転を強いている背景には阪急宝塚線との集客競争があります。事故を起こした207系はステンレス製軽量で百二十キロの高速が出ます。「一九九三年の導入当時はまだ百キロしか出ない旧型車両も多く走っていたのでそれほどでもなかったが、九七年の東西線開通で新型車両への入れ替えが進むにつれて、スピードアップしていった」と運転士はいいます。

 宝塚―大阪間は二十三分と、阪急・宝塚線より七分短縮を実現。さらに増発をくり返しラッシュ時には三分―五分間隔で電車を走らせるようになっています。この間、JR宝塚駅の一日平均乗車数は一九九七年の約二万八千人から、二〇〇三年には約三万人へ増加。阪急の乗車客がJRに流れたことは明らかです。

乗務員に負担

 二〇〇三年には新興住宅地に近い中山寺駅(宝塚市)を快速停車駅にしましたが、宝塚―大阪間の所要時間は変えませんでした。「高速化した列車がしかも過密ダイヤで走っているので定時運行が求められる。遅延するといよいよ遅れを取り戻す回復運転の必要に迫られ、さらに無理な高速運転が強いられる」と運転士は告発します。同社の中期経営目標でも「列車の遅れはお客様の信頼を裏切るもの」として「ダウンタイム(運行の遅れ)の短縮」を社内目標の柱に掲げています。

 ところが同社が今月上旬に実施した朝のラッシュ時の「遅延状況調査」で、JR福知山線で調査対象になった上り電車、全四本に連日平均七十一秒―四十秒の遅れが明らかに。無理な高速・過密ダイヤのため遅延が常態化していることが判明しました。その無理が乗務員の負担となっています。四月三十日の会見で同社は「必要があれば(ダイヤの)見直しを検討することもあり得る」とのべざるを得ませんでした。

 奈良―大阪間を結ぶ大和路線の現役運転士は語ります。

 「無理なダイヤは福知山線に限りません。電車は常に遅れがちです。遅れを報告すると指令から『回復運転に務めてください』と伝達されます。遅れを取り戻そうとできるだけ高速で走り、ブレーキをかけるタイミングをギリギリまで我慢して時間を短縮するテクニックを使っています。運転士は常に緊張にさらされているんです」


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