2005年4月29日(金)「しんぶん赤旗」
「私鉄に勝つ」と120キロ
JR西の経営姿勢 労働者が告発
乗務停止で月10万円減収
「輸送の安全という鉄道本来の使命を忘れたもうけ第一のやり方が引き起こした大惨事だ」。JR福知山線の列車脱線事故で、JR西日本の経営姿勢を労働者が告発しています。
あるベテラン運転士は指摘します。「事故を起こした二十三歳の運転士は、手前の伊丹駅でホームを四十メートル行き過ぎるオーバーランを犯し、一分半遅れで発車しました。遅れを取り戻すために百キロ以上にスピードを上げたのだと思います。西日本では、オーバーランが三、四メートル程度ならまだ問題にはなりません。しかし四十メートル以上のオーバーランを引き起こすと即乗務停止。運転台からおろされて『再教育』を受けることになります」
「再教育」の現場で
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続けていいます。「そのやり方は、現場にまかされているため、助役ら管理者が取り囲んで、『再教育』とは関係のない『教育』を強制されることもあります」
加えて収入減になります。「彼の場合、乗務をおろされると、乗務手当がなくなり、月十万円近くの減収になります。手当がなくて、基本給だけでは食べていくのが精いっぱいという賃金です」
労働者は並走する私鉄との競争をあおられています。別のベテラン運転士はいいます。「私鉄に勝つといって、一分でも遅延してはならないとした『定時運行』を強いられ、各駅停車でも最高時速百二十キロを出すことがしばしばあります。電車が遅れたら、自分の判断で百二十キロまでスピードを上げることもある」
JRの異常なスピードについて、阪急電鉄の運転士は語ります。「並んで走っていると、JRがスピードをぐんぐん上げているのが分かります。私たちには、こわくてまねできません。事故が起こったら大変だと感じていました。私たちはスピード競争はやりません」
ホームの陰で監視
JRの労務管理は、これにとどまりません。別の運転士はいいます。
「厳しい職務規定を守らせるために、管理者がホームの陰に隠れて乗務員の仕事ぶりをチェックする、乗客になりすまして運転室の後ろから運転士の動作や勤務態度を監視することまで起きている。こっそり監視する時間があるんだったら、もっと運転室に同乗して、指導しろと運転士仲間で話題になっています」
JR西日本の人減らし「合理化」のすさまじさを指摘する証言もあります。電車の検査・修繕に携わるある労働者はいいます。「発足当時の一九八七年には五万一千人いましたが、たび重なる人減らし『合理化』で約四割、二万人近くが職場を去り、現在は三万二千人に激減しています」
〇四―〇八年度の中期経営計画「チャレンジ二〇〇八」では、さらに人員を削減し、鉄道事業として「二万八千人体制」をめざしています。
あるベテラン労働者はいいます。「この間、線路の保守・点検の作業や車両の検査・修繕の業務も外注化しました。不慣れな低賃金の契約社員を駅に配置しています。労働者に無理な負担を押しつけている経営方針が今回の事故につながっているのではないか。人間らしく働ける職場を確立することは急務です。それが乗客・国民の命と安全を守る確かな道です」