2005年4月28日(木)「しんぶん赤旗」

JR脱線

車両強度 数値基準なし

国交省は鉄道会社任せ


 JR福知山線の列車脱線事故で、脱線してマンションに激突した電車は原形をとどめないほど大破し、JR史上最大の死者を出しました。二○○○年三月の地下鉄日比谷線事故では、車両の軽量化で強度が犠牲にされているという批判が出ました。しかし、車両強度について数値で示した国の基準はなく、衝突事故も想定されていません。どの程度の強度を確保するかは鉄道事業者任せになっているのが現状です。これが被害を大きくした可能性があり、専門家からは「国が規定を持つべきだ」という強い批判が出ています。

 大破した車両はJR西日本が一九九一年から導入した「207系」。ステンレス製で重さは約三十トン。ステンレス製車両は旧国鉄時代に主力だった鋼鉄製に比べて数トン軽く、省エネでさびにくいため維持費も安い。鉄道各社は一九八○年代から導入を本格化しました。

 新型車両を導入する際、鉄道事業者は国土交通省に申請書を提出。同省は車体の強度やバリアフリー対応などについて、省令で定める基準を満たしているかどうかを書面審査します。

 省令は「車体は堅牢(けんろう)で十分な強度を有し、運転に耐えるものでなければならない」とだけ規定しています。解釈基準で「通常の営業運転で想定される車体への荷重等に対し、運転に耐えることができる十分な強度、剛性、耐久性を有するものであること」とされていますが、強度の数値的な基準はありません。

 衝突を前提にした規定もなく、同省鉄道局は「衝突を防ぐ対策を取ってきた」と説明しています。つまり衝突は想定していないのが実態です。車両製造の際、鉄道各社と車両メーカーが依拠しているJIS(日本工業規格)も通常走行時の強度が前提になっています。

 旧国鉄出身の交通評論家角本良平さんは鉄道各社任せの現状を「事業者数が少なく、国が不安を感じずに済んだため、長年続いた慣行」と指摘。「今回の事故で国民の多くが不安だと思えば、国は規定を持たざるを得ない」と話しています。


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