2005年4月27日(水)「しんぶん赤旗」
主張
JR西日本脱線事故
なぜ大惨事が繰り返される
兵庫県尼崎市で二十五日に起きたJR西日本の電車脱線事故は、死者七十人以上、重軽傷者四百数十人という大惨事となりました。一両目がマンション一階にめり込み、救出までに二十時間以上も車内に閉じ込められた乗客もいます。
なぜこのような事故が起きたのかについては、調査が始まったばかりであり、今後の究明を待たなければなりません。しかし、多くの乗客の命を預かる鉄道で、大惨事が繰り返されていることに、恐怖とともに、憤りを感じます。
信楽事故から14年
JR西日本は、十四年前の一九九一年五月にも、死者四十二人、重軽傷者約六百人を出す大事故を起こしています。滋賀県の信楽(しがらき)高原鉄道で、同社の列車と、乗り入れていたJR西日本の列車が正面衝突しました。
ところがJR西日本は「法的責任はない」という態度をとり、犠牲者の遺族にたいして誠実な対応をしませんでした。そのため、遺族は損害賠償を求める訴訟を起こし、勝訴しています(二〇〇二年十二月の大阪高裁判決が確定)。
九九年六月には、山陽新幹線福岡トンネルでコンクリートの塊が崩落して走行中のひかり号を直撃。一歩間違えば大事故になりかねないのに、JR西日本は、「架線の金具が破損」と発表しただけで、一時間半後には運転を再開しました。
〇三年二月には、睡眠時無呼吸症候群の山陽新幹線運転士が、約八分間―二十六キロメートルも居眠り運転。〇四年三月には、奈良県・JR関西線王寺駅で、入れ替え作業中の電車が、交換を怠っていた摩耗レールが原因で脱線。JR西日本の安全管理が問われる事件が相次いでいました。
こうした流れのなかでの、再度の大惨事であり、会社の姿勢が厳しく問われます。
今回の事故では、「いつもにないスピードで飛ばしていた」という乗客の証言や車掌の供述などもあり、速度超過だったという見方が強まっています。伊丹駅で四十メートルも停車位置からずれて遅れを出したため、それを取り戻す運転をしていたようです。しかし、脱線の原因は、車両や線路の状況などもあわせて調査・分析しなければわかりません。
乗客の生命と安全を守るためには、二重、三重の対策が必要です。
五人の死者をだした営団地下鉄日比谷線の脱線事故(二〇〇〇年三月)以降、カーブに車輪浮き上がり防止の安全レールや脱線防止ガードをつける対策が徹底されてきました。ただ、半径二百五十メートル以下の急カーブが対象で、半径三百メートルの今回の事故現場は、基準外だったために、安全レールなどはありませんでした。線路の状況に応じた対策や基準そのものの見直しも必要でしょう。
また、現場に設置されていた列車自動停止装置(ATS)は、旧型のものでした。赤信号を無視した場合に非常ブレーキをかけることはできても、制限速度に応じてブレーキをかけるものではありませんでした。
再発防止を確実に
脱線防止が大前提ですが、仮に脱線が起きても、人命が奪われないようにする必要があります。今回、線路を大きく飛び出してマンションに激突する事態になったのはどうしてか。車両は、事故の際に人命を守れる強度になっているのか。徹底的な究明と検討が必要です。
再発防止を確実にするための原因究明を行い、全国の鉄道の安全対策を万全にしなければなりません。