2005年4月26日(火)「しんぶん赤旗」

民主党憲法調査会

9条改定 中間報告で明記

投票法案 自公と協議へ


 民主党憲法調査会(会長・枝野幸男衆院議員)は二十五日、党本部で総会を開き、「憲法改正国民投票法制に係る論点とりまとめ案」と、「憲法提言」とりまとめに向けた「中間的な報告」を確認しました。枝野氏は、総会後の記者会見で国民投票法案について自公との協議を連休明けにも開始する可能性を示唆しました。

 枝野氏がまとめた「中間報告」は、五つの小委員会での論議の状況をまとめたもの。焦点の九条について、「何らかの形で『自衛権』を憲法上明確に位置付ける」として九条二項改定の方向を明記。「国連の集団安全保障活動への参加」を「明確に規定する」とのべ、海外での武力行使の道を幅広く開いています。

 また、「政党には、自党の意見表明だけにとどまることなく、国会としてのコンセンサスをどう取りつけるのかに向け真しに努力していくことが求められる」と強調。憲法総論や人権保障に関連して、「わが国の歴史、伝統、文化を踏まえた国の形を明示する」、「人権や環境の保護・維持向上のための『共同の責務』を明確にする」など、自民党の改憲論との共通項が目立ちます。

 国民投票法案について枝野氏は会見で「改憲に弱腰でない政党の間でゼロから議論をはじめる」「条件が整えば明日にでも協議をはじめたい」とし、連休明けにも自民・公明との政党間協議を開始する意向を表明。同時に、国会法を「改正」して憲法調査会を存続させたうえ、政党間協議と並行して、調査会の場で投票法案の「調査」をおこなう考えも示しました。

 「論点取りまとめ」では「投票権者の範囲」「国民投票の方式」「投票運動規制」など、十四の論点について基本的提案と理由、またその他に選択しうる案を明記しています。


解説

改憲姿勢をアピール

 民主党は、昨年十二月の党大会では三月末をめどに改憲案作りのたたき台となる「憲法提言」をまとめるとしていましたが、今日なおその「骨子」さえ提示できていません。枝野幸男憲法調査会長名で「中間報告」を示したのも、なんとか“実績”を残しておくためです。

合意形成を意識

 ただ、その内容には改憲発議に必要な国会での三分の二以上を確保するために自民党との合意形成を意識したものが目立ちます。

 枝野氏は会見で、「改憲を本当にやる気なら自己満足ではなく、与野党の壁を越えて三分の二をどうやって形成するかを考えるべきだ」と強調しました。

 焦点となる九条をめぐっては、「何らかの形で『自衛権』を憲法上明確に位置付ける」としました。また、「集団安全保障活動への参加を明確に規定する」、「参加に係る具体的基準については改めて検討・審議する」とし、九条二項の戦力不保持規定を見直すとともに、国際貢献の名のもとに海外で武力行使する方向を示しています。

主導権確保狙う

 これは、今月四日、自民党新憲法起草委員会小委員会の要綱と同様の内容です。自民党の要綱でも、「自衛のために自衛軍を保持する。自衛軍は国際の平和と安定に寄与することができる」とし、詳細は安全保障基本法と国際協力基本法の制定によるという方向を示しています。改憲論の焦点が九条二項の改変によって「海外で武力行使する国」に日本をつくりかえることにあることが改めて浮き彫りになりました。

 一方、改憲のための国民投票法案の「論点とりまとめ」を発表したのは、改憲への積極姿勢を最大限アピールするためです。改憲論議を盛り上げ、主導権を確保する狙いがあります。

 枝野氏は、二月十七日の衆院憲法調査会で改憲草案づくりと国民投票法案の整備で自民党と協議する準備があると表明。自民党がこれに「歴史を変える発言だ」と「歓迎」の姿勢を示していました。

 枝野氏は「憲法提言」へ向けた「中間報告」の中でも、「当面の課題として、憲法改正手続き法制の整備にとりかからなくてはならない」と強調。「どのような仕組みがいいのか、国民の自由闊達(かったつ)な議論を沸き起こすために何が必要なのかしっかりと踏まえて、法整備に対処していかなければならない」と主張しています。

 憲法改悪をすすめる与党と民主党の合意形成のさきがけとして重大な意味をもちます。(中祖寅一)


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