2005年4月22日(金)「しんぶん赤旗」

“ナチスと日本は違う”町村外相発言

侵略の免罪だ韓国で反発


 町村信孝外相が十四日の参院外交防衛委員会で日本共産党の緒方靖夫議員に答弁したなかで、日本の戦争犯罪はナチス・ドイツの犯罪と違って、より軽いという趣旨の発言を繰り返し、侵略と植民地支配を事実上、免罪する態度をとりました。韓国メディアはこのやりとりを大きく報道。韓国では外交通商省スポークスマンが反論の論評を発表するなど反発が広がっています。

 中央日報十五日付は、町村外相が「緒方靖夫(共産)議員の質問を受け、『単純に比較することは適切でない』と答えた」と報道。「これは、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領がドイツの歴史に対する反省と戦後処理を模範例として提示しながら日本に真の謝罪と反省を促したことに対する反論だと解釈できる」と指摘しました。

 東亜日報(電子版)は、「緒方靖夫議員が歴史の反省を求めた」とした上で、町村外相の発言について「日本の軍国主義が隣国に被害を与えたことは認めるが、これをナチスのユダヤ人虐殺と比較することは受け入れることはできないという論理だ」と批判。南京大虐殺や七三一部隊による韓国人、中国人などに対する細菌戦人体実験をあげ、「『ナチスと日本は違う』という日本政府の主張は説得力がない」と強調しました。

 SBSテレビは十五日、町村外相が盧大統領に「抗弁した」とし、「日本が歴史をわい曲しているという韓国と中国の批判は遺憾なことだと主張した」と伝えました。

 韓国外交通商省は十五日、スポークスマン論評を通じ、ドイツが法的・道義的な謝罪と補償を行い、歴史を新しい世代に徹底して教育していると指摘、「これに比べ、日本政府は公式的に反省と謝罪をしたにもかかわらず、これを無意味にする政治家のわい曲発言が繰り返され、歴史をわい曲する教科書が検定に合格している。これはドイツと日本の歴史に対する認識と姿勢の違いを明確に示しているものとして、日本政府はしっかり認識し教訓を得る必要がある」と求めました。


解説

戦争犯罪への国家責任明確にした独と大違い

 町村外相は十四日の答弁で、ナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺と日本の侵略には「(被害の)人数に差がある」「性格に差がある」と主張。またドイツでは「全部ナチスのせいにすることができた」として日本と比較できないと述べました。

 日本とナチス・ドイツはイタリアとともに軍事同盟を結んで第二次世界大戦を引き起こしました。法を無視して他国を侵略し、アジアと欧州でそれぞれ数千万人を殺害したのです。数や性格の違いがあるなどと当事国の閣僚がいうことは許されません。

 戦後この三カ国の行為は人道に反する罪としてそろって国際的に断罪されてきました。そのなかで日本がほかよりましだという議論はまったく成り立ちません。

 アジアに対する日本の侵略と戦争は一九三三年のナチスの政権獲得以前に始まっており、ナチスよりはるかに長期にわたっています。

 日本は一九三一年九月の柳条湖事件で中国への侵略を本格化。四五年の敗北まで侵略と占領を続けました。そのなかでは南京大虐殺事件のような無差別殺りくが行われました。

 一九一〇年の併合で日本が植民地支配下に置いた朝鮮半島では民族を抹殺する政策が行われました。朝鮮人は民族としての存在を否定され、日本人化を狙う「皇民化政策」のもとにおかれました。日本式の姓名を押し付け、学校では日本語が強要されました。

 戦後ドイツ(西独)は一九五三年に制定した連邦補償法でナチスによる大量虐殺を国家として「犯罪」とはっきり認めました。国としての責任を明確にしました。補償の対象となる被害者についても民族、宗教、政治的信条やナチスへの抵抗を理由に迫害された人を具体的にあげ、ナチスへの抵抗をたたえました。

 戦後東欧と外交関係の樹立に尽力したブラント西独首相はポーランドのワルシャワ訪問でひざまずいて過去の侵略・虐殺に対する許しをこいました。戦後四十年を記念した一九八五年のワイツゼッカー西独大統領の演説ではユダヤ人だけでなくソ連やポーランドなどに国を代表して侵略を謝罪しました。こうした姿勢はいまもドイツの公式な態度です。

 シュレーダー独首相は今年一月、アウシュビッツ強制収容所の解放六十周年記念演説で、ナチスの犯罪を直視することは「古い『悪魔のヒトラー』の話に逃げ込むことではない」とドイツ人自身の責任を問いました。韓国の盧武鉉大統領が先の訪独で高く評価したのはこうしたドイツの姿勢です。

 町村外相はドイツでも国際社会を前に「ドイツ人は全部ナチスのせいにした」といえるのでしょうか。

 (山田俊英)


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