2005年4月21日(木)「しんぶん赤旗」
主張
参院憲法調査会
改憲は世論のすう勢ではない
参議院憲法調査会が「日本国憲法に関する調査報告書」を、自民党、公明党、民主党の賛成多数で議決し、参院議長に提出しました。憲法改定を事実上の前提として論点整理を行い、九条改憲への足がかりをつくろうとする報告書であり、日本共産党は反対しました。社民党も反対しています。
恣意的な論点整理
報告書は、四部構成となっていますが、中心は「第3部 主な論点及びこれに関する各党・各議員の意見」です(第1部組織概要、第2部審議経過、第4部まとめ)。
この中で、「各党・各議員の意見」を(1)「主な論点のうち共通またはおおむね共通の認識が得られたもの」(五党で意見が一致)、(2)「すう勢である意見」(自民、民主、公明の三党がおおむね一致)、(3)「主な論点のうち意見が分かれた主要なもの」(自民、民主、公明の三党の間においても意見が一致しなかったもののうち主要なもの)の三つに分類。憲法をどうするかという角度からの恣意(しい)的な論点にそって、自公民で「おおむね一致」すれば、それが「すう勢」だとして、憲法改定につながるようにしています。
これは、「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行う」(参議院憲法調査会規程)ことに限定されている憲法調査会の目的、性格を根本的に逸脱するものです。
調査では、百人を超す学識経験者を参考人として招き、意見を聞いて質疑を行っています。四度の公聴会で、様々な立場の国民が意見を述べています。そこで出された意見を「審議経過」に押し込め、議員の意見だけで「一致」、「すう勢」などというのはおかしいことです。
しかも、議員の意見交換も、政党間で改憲の論点や意見をすりあわせたというものではありません。それを、「共通」とか「すう勢」などと強引に分類するのは、事実にも道理にも反しています。
報告書は、憲法第九条にかんして、「戦力及び交戦権の否認を定める二項改正の要否」や「集団的自衛権を憲法に明記することの是非」、「自衛隊の存在と位置付け」を「憲法に明文で書くか、書くとすればどのような書き方になるか」、「国際貢献の在り方」を「憲法上明記すべき」かどうかなどについて、改憲の方向を「すう勢」とはできなかったものの、意見の分かれた「主な論点」の中に位置付けました。日本共産党の志位委員長は、記者会見で、「これは、九条改憲への足がかりをつくろうとするものであり、許されない」と、きびしく批判しました。
改憲発射台にはさせない
報告書は、「憲法調査会において議論を続けるべきとの意見」を「すう勢」だとしています。憲法改定のための国民投票法案を審議できるようにしようとするものです。
自民党の若林正俊議員は、議決にあたり「国民投票法案を早急に立案、審議すべきである。報告書が発射台となって新しい憲法にすすむことを期待する」と述べています。
しかし、憲法調査会の「調査期間は、おおむね五年程度」という「申し合わせ」(一九九九年七月)に照らしても、二〇〇〇年一月から五年を超す調査を行い、報告書を提出した以上、ただちに解散すべきです。改憲発射台として利用することを、認めることはできません。
改憲は国民世論の「すう勢」ではありません。憲法改悪に反対し、憲法を生かそうという声を、全国からまきおこしていきましょう。