2005年4月20日(水)「しんぶん赤旗」
主張
米産牛肉輸入問題
BSE意見募集はだれのため
内閣府の食品安全委員会が「我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価」報告書案への意見を募っているのにたいし、米政府が意見書を出してきました。
米政府の意見書は、BSEの検査対象を二十一カ月齢以上にすることを容認した点を「重要な前進の一歩」とし、さらに三十カ月齢以上に引き上げることを求めています。
米政府は国民か
食品安全委員会事務局では、米政府の意見書を「広く募集している意見・情報」として受理しています。しかし、報告書案の中身は、国内のBSE対策の評価です。意見公募も「広く国民のみなさまから」と明記しています。国内対策について、日本国民の意見を募集しているのに、米政府が意見書を出してくるというのはどういうことでしょう。
米政府の意見書の目的は、米国産牛肉の輸入再開です。「米国産牛肉の輸入再開のために必要な考慮と手続きを日本政府に迅速に完了することを期待する」と結ばれています。
もし、食品安全委員会が、米政府の意見書を受け入れれば、これまで自らが国民に行ってきた説明と矛盾することになります。
国民は、この時期の国内の全頭検査の見直しが米国産牛肉の輸入再開のためではないのかとの疑問を、意見交換会で出してきました。そのさい、食品安全委員会は「米国産牛肉の輸入再開について検討などは行っていない」と答えています。
国民の疑問を受けて、食品安全委員会のプリオン専門調査会でも、複数の委員が、「月齢見直しの諮問は米国産牛肉輸入に関連したものと受けとめられる」と発言。これにたいし、厚生労働省は「科学的合理性の確保」と答えました。また食品安全委員長が米国産牛肉輸入に関しては「別件として扱う」と答えています(報告書案)。
もともと、全頭検査を緩和する国内的な理由はありません。米政府が米国産牛肉の輸入再開のために日本に要求してきたものです。
輸入再開のために国内の検査基準を緩和するとの説明に、国民が納得しないのは当たり前です。
これまでの説明通り、食品安全委員会は、米政府の意見を受け入れるべきではありません。
米政府は、BSE検査の対象を三十カ月以上の牛とするために、日本で発見された若い感染牛が、「国際的にはBSEと確定されていない」とのべています。
しかし、たとえば日本で確認された二十三カ月の感染牛の場合、いままでわかっていたタイプとは違う「非定型的なBSE」とされました。日本での発見以降、「非定型的」な例が七カ国で確認されていると、プリオン専門調査会の委員は指摘しています。
全頭検査の継続を
日本の全頭検査は、BSE感染牛を食物連鎖から排除するとともに、世界のBSE研究を前進させる役割も果たしています。
米政府の圧力に屈して緩和する必要はありません。
食品安全委員会は、国内初のBSE発生などを苦い教訓として、二〇〇三年七月に農林水産省や厚生労働省から独立した機関として、内閣府に設置されました。食の安全の確保が仕事です。国民の意見を十分に反映させる任務があります。
米政府の、輸入再開のための圧力に屈するのではなく、全頭検査の継続を求める国民の声にこそ、耳を傾けるべきです。