2005年4月17日(日)「しんぶん赤旗」
主張
衆院憲法調査会報告
国民世論に逆行する改憲誘導
衆議院憲法調査会が最終報告書を議決し、衆院議長に提出しました。
自民党、民主党、公明党が賛成しました。
日本共産党は、山口富男議員が「改憲にむけた論点の整理は、本調査会の『報告書』たりえない」とのべ、反対しました。志位和夫委員長は、報告書議決の後ただちに記者会見し、きびしく批判する党の見解を発表しました。
二〇〇〇年一月に設置された憲法調査会は、憲法についての調査に目的を限定した機関です。そこから逸脱し、改憲の方向づけになるような報告書としたことは重大です。
九条改憲への方向づけ
報告書のまとめ方は、前文を含む憲法の各条項について、何を書きこむべきかの「是非」を論じる形になっています。“まず改憲ありき”の姿勢でまとめること自体、憲法調査会のあり方から逸脱しています。
しかも、報告書は「多く述べられた意見については、その旨を記す」として、議論に「大・小」をつけています。国会の多数党の意見を大勢であるかのように扱い、改憲の方向に誘導しようとするものです。
たとえば、第九条にかかわって、次のような記述があります。
「自衛権及び自衛隊について何らかの憲法上の措置をとることを否定しない意見が多く述べられた」
「非軍事の分野に限らず国連の集団安全保障活動に参加すべきであるとする意見が多く述べられた」
これは、志位委員長が批判したとおり、「自衛隊の海外での武力行使のための九条改憲への方向づけをあたえようとするもの」です。
自民党の船田元衆院議員は、報告書を議決する際の発言で次のように述べています。―「意見の多寡」の記載は「国民の憲法論議の参考に資するという点でも、大いに評価すべきもの」。自衛隊などについて「憲法上何らかの措置をとることを否定しない意見が多かった」との「文言」に「多くの政党」が「合意」したことは「大変大きな意義」がある。
報告書のこの文言を、「海外で戦争する国」に変える九条改憲の流れをつくるために利用する意図が明白です。
しかし、報告書は、「多く述べられた」意見でも「憲法調査会の意思決定による多数を意味するものではない」とも書いています。この報告書を、今後の国会での憲法論議を拘束するものであるかのように扱うことは許されません。
何よりも、国会議員だけで構成する憲法調査会の中では多数でも、国民の中では違います。各種の世論調査をみても、憲法第九条の平和主義を積極的に評価し、今後とも守り、生かしていくべきだと考える国民がたくさんいます。改憲論を誇大に描く報告書で、九条改憲の方向に世論誘導することは、多くの国民の意思に反しています。
ただちに幕を閉じよ
憲法調査会を存続させ、改憲の足場にしようとする動きも重大です。
報告書は、憲法調査会の「基本的な枠組みを維持」して「憲法改正手続法の起草及び審査権限を付与することが望ましいとする意見が多く述べられた」と記しています。
自民、民主、公明の各党は、この方向で足並みをそろえ、改憲のための国民投票法案審議を可能にすることを狙っています。
しかし、憲法調査会は、報告書の提出によって、五年間の調査はすべて終了しました。憲法調査会を常設機関化するのではなく、ただちに幕を閉じるべきです。