2005年4月16日(土)「しんぶん赤旗」

若者雇用

使い捨ての実態(下)

長時間労働でも被害者

党政策委員会事務局長
寺沢亜志也


 青年労働者の劣悪な労働条件のもう一つの特徴は、長時間労働でも、若い世代が非常に過酷になっていることです。

 政府の労働力調査でも、年齢別の労働時間は三十―三十四歳が一番長く、次が二十五―二十九歳です。長時間労働が若者の体と心をむしばんでいます。

 財界系の調査研究機関、社会経済生産性本部が企業に対して実施した「心の病」の調査では、「心の病が増えている」と答えた企業が六割(大企業では71・2%)に及んでいますが、一番多いのが、「三十代」と答えた企業が約五割です。

 三十四歳以下の正社員を対象にした調査では、約四割が「今の働き方が続くと病気になる」という不安を訴えています。過労による精神障害の労災認定も、二十代、三十代が全体の六割を占め、二十代だけでも23%にのぼっています。

訓練もなく

写真

要請行動で交流する青年たち=13日、国会内

 長時間労働の原因は、リストラで人員が削減され、業務量が増えたことです。そのうえ、業務に必要な訓練も教育もまともにされず、「即戦力」として仕事をさせられているため、いっそう長時間労働になる傾向があります。ベテランなら二、三時間でできる仕事でも、いきなりやらされるために深夜になってもできないとか、「保守部門から開発部門に回され、すぐに仕事をさせられるがうまくできない」「自費で社外の講習を受けたが役に立たず、長時間労働と仕事のストレスで一年でうつ病になった」という話も聞きました。

 長時間労働の実態をみても、若者が使い捨てになっているといえます。

 九〇年代後半からの大企業の乱暴なリストラと、それを応援する政府の「労働市場の規制緩和」「雇用の流動化」によって、雇用政策の最大の被害者が、若者になっているといっても過言ではありません。

 将来をになう若者を無法状態で働かせ、使い捨てにしている、こんな状態を放置してきた労働行政の責任は、きわめて重大です。

 派遣の「規制緩和」など雇用流動策をやめ、安定した雇用確保や、人間らしく働けるルールの確立へと雇用政策を転換することが求められます。

 同時に、派遣や請負での違法・脱法行為や、サービス残業(ただ働き)などの無法状態を放置することは許されません。

 大企業の責任は重大です。目先の利潤追求のために、若者を「使い捨ての労働」としてかりたてて、雇用契約をしていないから、自社の工場や関連会社で若者が悲惨な働き方をしていても自分たちには責任がない、という態度は許されません。

 この点で三月末、東京地裁で画期的な判決がありました。ニコンの埼玉・熊谷工場で請負社員として働いていた二十三歳の青年が過労自殺した事件で、雇用主の請負会社だけでなく、ニコン側にも過労自殺に追い込むような過酷な労働条件で働かせてきた責任がある、と認めたのでした。

世界の常識

 いま、企業の社会的責任として、サプライ・チェーン・マネジメント(情報技術を使った調達・受発注の一括管理システム)にも社会的責任が及ぶ、ということが世界の常識になっています。大企業は、下請けや関連企業から納入される部品を製造する労働者の労働環境についても責任がある、というものです。

 若者の「悲惨な労働実態」は、まだまだ明らかにされていません。

 「偽装請負」やサービス残業など数々の違法行為が広く行われているため、労働実態の全体が「闇の中」にとどめられているのです。さらに、労働組合もなく、労働者としての基本的権利すらきちんと知らされていないもとで、多くの若者が働いています。

 いまこそ、「国民の苦難と要求あるところ日本共産党あり」の立場で、無法状態のなかで踏みにじられている若者の要求や将来への不安と悩みをとりあげ、その解決のために知恵と力を尽くさなければならないと決意しています。

 (おわり)


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