2005年4月16日(土)「しんぶん赤旗」

衆院憲法調

山口議員の発言(要旨)

9条の生命力示された


 日本共産党の山口富男議員が十五日の衆院憲法調査会で行った発言(要旨)は次のとおりです。


 憲法調査会は、「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行う」ことを目的に、調査のみに限定された機関として出発した。

 日本共産党は、日本国憲法の歴史的、現代的意義を明らかにするとともに、憲法の諸原則に照らして現実政治を点検する調査こそが、憲法調査会の目的、性格にそうものであることを主張し、その立場で調査に臨んできた。しかし、憲法調査会には、つねに改憲の動きがもちこまれ、目的と性格にふさわしい五年間とはならなかった。

イラク戦争の中で

 焦点となった憲法九条をめぐって、鋭く問われたのは、米国が、単独行動主義・先制攻撃戦略にもとづいてすすめたイラク戦争と、それを支持した日本政府の態度であった。米国の行動とイラク戦争は、国連憲章・国際法に反するものとして世界の批判にさらされた。

 本調査会においても、参考人、公述人等を含め、米国の無法と日本政府の対応にきびしい批判がなされた。そして、国連憲章にもとづく平和のルールの実現とともに、「戦争のない世界」をめざす憲法九条は、世界の平和にとってかけがえのない生命力を持っていることが示された。

 基本的人権をめぐっては、いわゆる「新しい人権」がとりあげられた。これは、憲法一三条の幸福追求権、二五条の生存権などに立った国民の運動によって確立してきた権利である。問題は、それを実効あるものにするための努力をなすことであり、その実現に逆行する現実政治を変えることこそが課題であるとの意見が、多くの参考人、公述人等からのべられた。

 今日問われていることは、憲法を改変することではない。憲法の諸原則と現代的意義をあらためて深くとらえ、政治と社会の各分野で、憲法を守り、生かす豊かな営みをすすめることである。

規程逸脱の報告書

 本報告書は、こうした調査の経過と結果を反映したものではない。それどころか、調査会規程をも逸脱した、憲法改定にむけた論点整理の「報告書」となっている。

 第一に、憲法の各条文において、何を明記するかの「是非」を論じるものとなっている。自衛隊の憲法上の明記、「集団的自衛権の行使の是非」、国民に「新たな義務規定を設けることの是非」、「国民も憲法尊重擁護義務を負うことを明記すべきか否か」など、「明記することの是非」を中心に論じることは、まさに改憲に向けた論点整理であって、本調査会の性格に反するものである。

 第二に、「各論点ごとに、発言の数ではなく、意見を述べた委員の数をもってカウント」し、「概(おおむ)ねダブルスコアの開きがある場合に、大小関係をつける」という手法は、国会内の委員数によって改憲の論点をことさら大きくみせるものである。さらに、「委員の意見を論点ごとに類型化」することによって、「前文に我が国固有の歴史・伝統・文化等を明記すべきか否か」などを論点にあげるなど、事実上、与党などの改憲論議にそうものとなった。

 改憲にむけた論点の整理は、本調査会の「報告書」たりえない。

 なお、本報告書では「今後の憲法論議」として、「憲法問題を取り扱う国会の常設機関」の設置、憲法改正手続き法の整備を取り上げ、憲法調査会に憲法改正手続き法の起草・審査権限を与える方向を打ち出しているが、これらは九条改憲に道をひらくものであり、認めることはできない。

 本憲法調査会は、「『概ね五年程度を目途とする』調査が終了し」たのであり、衆議院議長に報告書を提出したのちは、静かにその幕を閉じるべきである。

課題解決への指針

 日本国憲法は、平和の問題でも、国民生活、人権・民主主義の問題でも、今日、日本と世界が直面する様々な課題に対して、解決の指針となる豊かな内容を持っている。

 憲法とともに生きてきた多くの国民は、九条改憲を志向する勢力に抗して、憲法のめざす平和、人権、民主主義の日本に向かって、さらに前進するであろう。そして、この道は、アジアや世界の平和・友好に新たな段階をきりひらく展望を持っているのである。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp