2005年4月16日(土)「しんぶん赤旗」

主張

障害者支援法案

自立をうばう応益負担の導入


 障害者自立支援法案が国会に提出されています。

 障害者施策の一元化などが打ち出されている一方、これまでは所得に応じた「応能負担」である福祉サービスの利用者負担に一割の定率負担を新たに導入しています。

大幅なサービス低下

 低所得者への軽減措置をしてもなお大幅な負担増となっています。明らかに現状より大幅なサービス低下を招く制度改悪です。

 厚生労働省の試算でも平均的な負担増は、ホームヘルプサービスが約千円から約四千円と四倍です。

 通所施設は、一割の自己負担に食費の自己負担が加わり、約千円から約一万九千円へと、十九倍にはねあがります。

 心臓病や腎臓病(透析)などの障害の治療に欠かせない公費負担医療制度も自己負担が増え、新たに入院時の食費も負担させられます。うつ病や統合失調症などの精神通院費用の自己負担は、5%から10%へと倍に上がります。

 障害者の多くが月十万円未満の収入であり、障害あるゆえの特別な出費も少なくありません。車での移動などの費用で、月数万円の支出を余儀なくされています。

 大幅な負担増は、生きていくうえで欠かせないサービスや医療を抑制する事態を招きかねません。

 一割の定率負担は、サービスの利用量に応じて負担が増えていく「応益負担」の仕組みです。これまでは「応能負担」が原則でしたから、大きな転換です。

 「応益負担」は、障害が重い人ほど、サービスの利用量が多くなるので、より重い負担となります。

 障害者が自立と社会参加するためには、ハンディキャップを補うための必要なサービスの利用が不可欠です。

 これに逆行する「応益負担」は、障害者福祉と相いれません。

 法案は、障害者本人が無収入でも、家族に収入があれば負担があがる「世帯所得」の仕組みを導入しようとしています。

 そうなれば、年老いた親の年金からも費用をとることになります。親に負担をかけずに自立して生活したいという障害者の切実な願いをふみにじるものです。

 日本共産党の紙智子参院議員が、参院予算委員会で質問し、「世帯所得」の仕組みの削除を要求したのにたいし、尾辻厚生労働相は「検討する」と答えています。

 障害者団体が“自立を阻害する”とこぞって批判している応益負担導入や自己負担の増大をやめるべきです。また、成人の扶養義務制度の実質的な導入は、すべきではありません。

 自立支援というなら、所得保障をはじめ、サービスの基盤整備の拡充など障害者施策の抜本的な充実と、そのための障害者関係予算の大幅な増額が大前提です。

障害者の声を反映して

 ところが、政府は、「財政抑制」を基調に、負担増を障害者と家族に押し付けています。負担増は総額六百九十億円にものぼります。

 この政府の姿勢を転換し、障害者が、どこでも安心してサービスが受けられるようにしなければなりません。

 障害者自立支援法案は、これまでの障害者施策のあり方を大きく見直すものです。審議にあたっては拙速を避け、障害者と家族の声を十分に反映させ、慎重に論議をおこなう必要があります。


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