2005年4月16日(土)「しんぶん赤旗」

衆院調査会最終報告書

「改正手続き整備」盛る

九条改憲 方向づけ

山口議員 「憲法生かす営みこそ」

志位委員長が記者会見


 衆院憲法調査会は十五日午前、自民、公明、民主の賛成で五年間の活動のまとめとなる最終報告書を議決し、河野洋平衆院議長に提出しました。日本共産党の山口富男議員は「調査の経過と結果を反映していない」と反対。社民党も反対しました。日本共産党の志位和夫委員長は国会内で記者会見し、「改憲にむけた論点整理の報告書」と批判、「国民のなかで憲法改悪を許さないゆるぎない多数派をつくるために力をつくす」とのべました。


 最終報告書は、「論点」ごとに意見の多数・少数を明記し、事実上改憲を方向づける内容になっています。これは「調査の経過と結果を記載」するだけとした調査会規程を逸脱するものです。

 焦点の九条に関しては、多数意見として「自衛権の行使として必要最小限度の武力の行使を認める」「非軍事の分野に限らず国連の集団安全保障活動に参加すべきである」などが盛り込まれました。また、「今後の憲法論議」の項目で、憲法調査会を常設化し、九条改憲のための国民投票法案の「起草及び審査権限」を与えるとの意見が追加されました。

 山口議員は、調査会には改憲の動きがもちこまれる一方で、参考人を含め「戦争のない世界」をめざすうえで九条がかけがえのない生命力をもっていることや、人権の実現に逆行する現実政治を変えることこそが課題であるとの意見が多く出されたと指摘。こうした点を反映していない報告書を批判しました。

 そして、「憲法問題で問われていることは憲法を改変することではなく、憲法の諸原則と現代的意義を改めて深くとらえ憲法を生かす豊かな営みを進めることである」と主張しました。

 自民、民主、公明の各党は、「憲法見直し作業に向けて、今後の指針となる」(船田元議員・自民)、「報告書の作成を一つのスタートラインとして、第二ステップに進むことを期待」(枝野幸男議員・民主)、「憲法論議はいよいよこれから本番が始まるのだ」(赤松正雄議員・公明)などと報告書を評価しました。


衆院憲法調査会報告書 骨子

一、前文にわが国固有の歴史、伝統、文化等を明記すべきだとの意見多数

一、現行の象徴天皇制維持と女性の皇位継承を認める意見多数

一、九条一項の戦争放棄の理念堅持、自衛権の行使として必要最小限度の武力行使を認める意見多数。集団的自衛権行使の是非は意見が三分

一、非軍事分野に限らず国連の集団安全保障活動に参加すべきだとの意見多数

一、新しい人権を積極的に認めることが共通の認識

一、内閣総理大臣のリーダーシップ強化が必要との意見多数

一、憲法解釈が内閣法制局に事実上委ねられていることは不当だとする意見多数

一、調査会の枠組みを維持し、憲法改正手続き法の起草及び審査権限を付与するとの意見多数


カット

 憲法調査会 国会法一〇二条にもとづき衆参両院に設置された機関。憲法に関する「広範かつ総合的調査」を目的に二〇〇〇年一月から活動を続けてきました。「五年を目途」とする活動期間の経過により、最終報告書の取りまとめをおこないました。議案提案権をもたない調査会の性格から、報告書は本来「調査の経過と結果」を記載するだけでした。


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