2005年4月15日(金)「しんぶん赤旗」
若者雇用 使い捨ての実態 〈上〉
違法状態で「モノ扱い」
党政策委員会事務局長 寺沢亜志也
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深刻な青年の雇用問題は、大きな社会問題になっています。新卒採用などで改善しているかのような報道もありますが、現状は、そのような生易しいものではありません。
二十四歳以下の失業率は、平均の二倍の10%程度に高留まりしています。パート・アルバイトや派遣、契約などの不安定雇用が急速に広がり、いわゆるフリーターは四百万人を超え、ニートとよばれる就職をあきらめたり、仕事をすることができない若者を含めると約五百万人にのぼるといわれています。これは団塊の世代のサラリーマンに匹敵する規模です。雇用者全体のなかで、非正社員が三割を超えましたが、二十四歳以下では46%と二人に一人になっています(グラフ)。
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重大なことは、こうしたなかで多くの若者がきわめて劣悪な労働条件のもとで働いていることです。
週刊『エコノミスト』誌が、「あなたは知っていますか? 娘、息子の悲惨な職場」という特集(三月二十二日号)を組みましたが、青年労働者の個々の事例をみると、労働条件が三十年も、五十年も逆戻りしてしまったかのような、まさに「悲惨な職場」で働かされています。
特徴的なことの第一は、派遣や請負など、無法・違法状態が当たり前のような劣悪な環境で、多くの若者が働いていることです。
会社に借金
NHKが「フリーター漂流――製造現場を転々とする百万人の若者たち」という番組で、請負労働の実態を放送しました。北海道から九州まで全国から若者が栃木県の通信機器メーカーの工場に集められ、民間アパートを借り上げた寮に住み込み、毎朝、バスで工場に送り込まれていきます。時給は千円程度。生産調整などメーカーの都合で、仕事も、工場も次々に変わります。きびしく、やりがいもなく、将来の展望もない働き方のなかで、半数の若者が契約期間の半年間ももたずに辞めていく、という姿が映し出されました。
請負で働いた青年たちの実例をいくつか聞いても、まさに「モノ扱い」で、違法・脱法行為が当然のように行われています。
借り上げアパートの寮の部屋のカギを請負会社の担当者が全部持っていて、朝、寝ていようが、少々体調が悪くても、引っ張り出すためです。請負会社は、一人も欠けずに時間どおりに工場に送り込まねばならないからです。とにかく「欠勤」をさせない、そのために、皆勤手当の比率を非常に高く設定したり、一日欠勤するとその月の時給が千円から八百五十円に自動的に下がるなど、休むと給料が格段に減るような給与体系になっています。
寮の家賃だけでなく、テレビ、冷蔵庫、洗濯機のリース料も、相場からみてもだいぶ高い額が給料から天引きされます。欠勤すると、手取りが大幅に減り、そのために生活費が尽きると請負会社から借金をしてしのぐという話もありました。まるで「たこ部屋労働」が復活したかのようです。
一兆円市場
こうした請負労働者は百万人を超え、市場規模は一兆円になるといわれ、そのほとんどが若者なのです。
派遣労働者も、業界の競争激化から「労働条件のダンピング」が激しくなっています。派遣の契約期間は三カ月未満が全体の七割を占めるとされています。いわゆる短期・反復によって、いつでも雇用調整できるようにしているのです。こうしたやり方は、厚労省のガイドラインでも望ましくないとされていますが、実態は、まったく無視されています。女性の場合は、子どもがいる(残業ができない)とか、三十代後半になると登録をしても仕事がこないという状況で、日経新聞でも「まるで若年定年制が復活したようなありさま」(〇四年十月十八日付)としているほどです。
(つづく)
たこ部屋 監獄部屋ともいい、道路工事や鉄道建設、鉱山では、明治時代から多くの労働者が飯場や納屋に寝泊まりして、親方の支配下で働いていました。暴力による強制労働やリンチがつきもので、自分の体を食って生きるようなものだったことから、たこ部屋と呼ばれました。現在、労働基準法(第五条・強制労働の禁止、第六条・中間搾取の排除)で禁止しています。 |