2005年4月15日(金)「しんぶん赤旗」
主張
米軍思いやり予算
痛みと危険を増やす不当支出
二〇〇五年度の米軍「思いやり予算」は、昨年より六十三億円減ったとはいえ、依然二千三百七十八億円という巨額を維持しています。それだけではありません。二百六十三億円のSACO経費(沖縄にかんする特別行動委員会の合意実施の経費)も、もともと日本に負担義務のない基地移設のための費用であり、第二の「思いやり予算」です。合計二千六百四十一億円です。
定率減税縮小・廃止、年金や介護保険での負担増など国民に激痛を与えながら、米軍には大サービスです。出す必要のない税金を支出して、世界の危険を大きくしており、まったく道理に合いません。
「気前のよい支援」
「思いやり予算」は、米軍地位協定が日本の負担義務としている経費ではありません。地位協定は、私有地借り上げ料など基地の提供に伴う経費を日本負担、それ以外の「合衆国軍隊を維持することに伴う経費」は「合衆国が負担する」(第二四条一項)と明記しています。
しかし、一九七八年、金丸防衛庁長官(当時)は「思いやり予算」にふみきりました。円高・ドル安で、「在日米軍が駐留経費の負担に苦しんでいる」というのが理由です。隊舎、家族住宅、学校、教会、診療所などの施設から、次第に日本人従業員の福利費などにまで拡大。八七年からは経費負担について五年ごとに特別措置協定を結び、更新を重ねて、日本人従業員の給与から光熱水料、訓練のための移転経費まで負担しています。最初七十八億円だったものが二千三百七十八億円と激増。九六年からは、SACO合意(九六年十二月)を実施するための「SACO経費」も負担。七十二億円から二百六十三億円にふくらみました。
「思いやり予算」は、「米国内よりも日本に駐留させる方が費用はかからない」(九五年 ナイ国防次官補=当時)、「アメリカの同盟国のなかでもっとも気前のよい支援」(〇五年三月 ファロン米太平洋軍司令官)と米政府と軍を喜ばせています。「思いやり予算」によって、在日米軍基地の整備・強化がすすみ、イラク侵略などへの出撃を保障する役割を果たしているからです。
米軍をいすわらせ、世界の平和を脅かす米軍基地の基盤づくりに手をかすことは、日本のためにも世界のためにもなりません。
このまま「思いやり予算」を許すなら、さらに負担が広がる危険があります。
米軍再編に伴って、新たな費用負担が問題になっています。
新たな負担の危険
現在の特別措置協定は来年三月に終了します。日本政府は、更新することを事実上アメリカに約束しました。二月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同発表は、「特別措置協定が在日米軍のプレゼンスを支援する上で果たす重要な役割について協議を開始することを決定」しました。
日米協議のなかで取りざたされている米陸軍第一軍団司令部の米軍キャンプ座間(神奈川県)への移転や沖縄海兵隊の一部部隊の自衛隊演習場などへの移転は巨額の経費を伴います。隊舎をはじめとする新たな施設が必要となるからです。しかし、地位協定からいっても日本が負担すべきものではありません。
米軍再編経費まで日本が負担することになれば、「第三の思いやり予算」ともいうべきものとなります。国民の痛みをさらにひどくし、国民の願いに反して、在日米軍基地の恒久化に手をかすことになります。