2005年4月14日(木)「しんぶん赤旗」
主張
フリーター正社員化
まず財界トップが率先して
厚生労働省が、フリーターを年間二十万人常用雇用化する計画を発表しました。政府がフリーター対策で、正社員を増やしてフリーターを減らす目標を掲げるのは、これまでにないことです。大企業に正社員の採用を増やすよう求めてきた、若者たちの運動を反映するものです。
実のある対策が必要
計画によれば、ハローワークでフリーター向け窓口を設け、専任職員が相談に応じ新規に約十万人、実践的な能力開発などで約十万人の雇用を見込んでいます。
パートやアルバイト、派遣・請負など不安定な雇用で働く若年フリーターは、いま四百万人を超えます。フリーターの七割以上が正社員を希望しています。フリーターを減らし正社員を増やすためには、それにふさわしい実のある対策が必要です。
フリーター対策のため、経済界、労働界、教育界など各界の代表が参加する「若者の人間力を高めるための国民会議」を五月に発足させるともいいます。財界からは、議長に奥田碩日本経団連会長(トヨタ自動車会長)が予定され、北城恪太郎経済同友会代表幹事(日本IBM会長)らもメンバーに就く見通しです。
これまで財界はしばしば「フリーターが増え続けるのは働くことを教えていないから」(北城氏)とのべ、若者の働く意欲がないことを問題にしてきました。
しかし、フリーターの激増は、若者の意識よりも、企業側の対応が問われる問題です。大企業がリストラ一辺倒で、正社員を減らしてパート、派遣・請負など安上がりの雇用ばかり増やしてきたからです。
日本経団連も、企業が「雇用調整を行ったことが、若年層の雇用問題を深刻化させた可能性は否定できない」「まず企業が若年者に対する有意義な雇用機会を増やす」必要がある(〇五年版経営労働政策委員会報告)と認めています。
とくに奥田、北城両氏が経営にかかわる自動車、電機大手では、請負・派遣社員の比重が高まるばかりです。請負労働者の場合、賃金が正社員の三分の一で、企業の都合によって使い捨てにされ、まるでモノ扱いです。しかも、請負を偽装した違法な「人貸し」が横行しています。
人権を無視した劣悪で無法な「人貸し」に依存しても、利益さえ上がればよいというのでは、企業の社会的責任が厳しく問われます。
この現状が続けば、二〇〇一年に四十六万人だった三十五歳以上の中高年フリーターが、一一年に百三十二万人、二一年に二百万人を超える(UFJ総研推計)という深刻な事態です。
技術・技能を持たない若年者が増えれば「将来の日本全体の競争力低下をもたらしかねない」(経労委報告)のです。社会保険に入れない若者が増えれば、年金など社会保障の土台を崩し、少子化の要因になり、日本社会の未来を危うくする問題です。
求められる社会的責任
財界トップはまず、大企業が若者の正社員を大幅に増やすことを率先して実行すべきです。例えば「百万人」ともいわれる請負労働者を、正社員として直接採用するだけで、雇用の改善に大きく役立ちます。
政府は、大企業に正社員の雇用と人材育成のため、社会的責任を果たすよう強く求めるべきです。
同時に、正社員が過重労働で身も心もボロボロになり転職する例が少なくありません。正社員も非正社員も、人間らしく働ける労働条件と均等待遇を実現することです。