2005年4月13日(水)「しんぶん赤旗」
主張
憲法と伝統
未来に継承できるものでこそ
日本国憲法は、公布(一九四六年十一月三日)から五十九年。施行(四七年五月三日)から五十八年になります。それ自体、日本の伝統となっており、二十一世紀になって、ますます輝きをましています。
ところが自民党などは、日本国憲法を古いかのように攻撃して改憲を主張しつつ、「新憲法」の前文には「伝統」を盛り込めと言っています。改憲論者が主張する「伝統重視」とは、どういうことでしょう。
56年で命脈つきたのは
自民党の新憲法起草委員会の改憲要綱はいいます。「天皇がわが国の歴史、伝統及び文化と不可分であることについては共通の理解が得られた」
同委員会の「前文に関する小委員会」は、次のように要求しています。「明治憲法(大日本帝国憲法)、昭和憲法(現行日本国憲法)の歴史的意義を踏まえ、日本史上、初めて国民みずから主体的に憲法を定める時期に到達したこと」を盛り込め。
これらは、日本の歴史や伝統を天皇中心に考え、天皇主権の明治憲法まで、意義あるものとして復活させようとする考え方です。
自民党憲法調査会会長の保岡興治衆院議員が、衆院憲法調査会で発言しています。―「長い歴史や伝統、すなわち『国柄』を大切にして、日本の香りのある憲法にする」、「天皇制が…世界に比類なき貴重な存在であることを確認することが大切だ」(二月二十四日)。
「世界に比類なき天皇制」をもった「国柄」である――戦前さながらの言葉に、自民党の時代錯誤と復古主義が表れています。
実際、自民党は、九条を改定して「自衛軍」を保持することを主張しています。これは、たんなる「自衛隊の合憲化」にとどまりません。「国際の平和と安定に寄与」を名目に海外での武力行使に道を開くものです。それを支えるため、国民に「国防の責務」を課すとしています。
日本をふたたび「海外で戦争をする国」に逆戻りさせる九条改憲の動きは、歴史偽造、侵略戦争美化の動きと結びついています。
明治憲法の美化、復活論もその一種です。しかし、人権と自由を抑圧する暗黒政治と侵略戦争推進の体制をつくった憲法であるために、明治憲法は、一八八九(明治二十二)年から一九四五年までの五十六年間で命脈がつきました。
日本国憲法の平和・民主原則は、明治憲法の「排除」のうえに成立しています。天皇絶対の専制政治は否定され、主権在民を原則とする民主政治へと、根本的に変わりました。天皇の地位も、絶対君主から「象徴」へと変わり、「国政に関する権能を有しない」存在になりました。国民が国の主権者となったのは、日本史上、初めてです。戦争放棄・戦力不保持の平和原則は、国際的にみても先駆的です。
平和主義を生かすとき
前の時代から現在、未来に継承できる積極的な内容があってこそ「伝統」です。憲法を明治憲法の方向へ逆戻りさせる改悪を、「伝統」の名で正当化することはできません。
日本国憲法は、内容はもちろん、年数においても明治憲法を超えました。国民が強く支持し、日本社会に定着させ、改悪を阻んできたからです。国連憲章にもとづく平和の国際秩序をめざす国際的な流れも大きくなっており、憲法の平和主義を生かすときです。日本共産党は、憲法の全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざします。