2005年4月12日(火)「しんぶん赤旗」
石原都政・自・公・民「福祉改革」
高齢者に“激痛”
共産党、条例案や予算組み替え要求
負担軽減へ提案
小泉・自公政権が進める大増税・大負担増路線のもとで、石原都政と自民、公明、民主など「オール与党」がこの五年半に進めてきた「福祉改革」がいま、高齢者に耐え難い“激痛”となって襲いかかっています。(東京都・長沢宏幸)
「えっ、こんなにお金をもっていかれるの」。東京・足立区内で一人暮らしの坂崎千代子さん(83)は、年金課税と石原都政の「福祉改革」がもたらす負担増の額に絶句しました。坂崎さんを訪ねた日本共産党の渡辺やすのぶ都議とともに試算してみると、年約二十四万円、一・三カ月分の年金が吹き飛ぶ計算です。(表参照)
小泉内閣が進める老年者控除や公的年金等控除の廃止で、これまで非課税だった所得税・住民税が課税され、これに伴い国民健康保険料は四倍近くに、介護保険料は倍加します。
苦しめるために政治があるのか
この“痛み”を耐え難いものに増幅させるのが、石原都政の「福祉改革」です。これまで通院など日常の足として大事に使っていたシルバーパスは、住民税が課税されると千円から二万五百十円に跳ね上がります。「福祉改革」で原則無料だったパスが、住民税非課税者千円、同課税者が二万五百十円の全面有料化されたためです。
坂崎さんは「政治は私たちを苦しめるためにあるのでしょうか。年寄りは早く死んじゃえということですね」と、さびしく笑いました。
共産党議員が都民生活支援策
「知事は福祉削減による都民の痛みを考えたことがあるのでしょうか」。日本共産党の渡辺都議は三月一日の都議会代表質問で、高齢者の痛切な声を取り上げて石原知事をただしました。
石原都政は、この四年間で福祉関係費を八百五十六億円(決算)も削減しています。こんなひどい福祉切り捨ては、これまでの都政にはなかったことです。
なかでも、老人福祉手当や老人医療費助成(マル福)の段階的廃止、重度障害者手当や障害者医療費助成の切り下げ、シルバーパスの全面有料化などは、高齢者の命や暮らしを直撃しています。
「国の悪政が都民生活を直撃しているいまこそ、東京都の予算のあり方を都民の立場で検証し、福祉予算を大幅に増やすなど、都民の暮らしへの応援を拡充すべきです」
渡辺都議はこうのべて、緊急の課題として高齢者の負担を軽減する具体的提案をし、都の支援を求めました。
シルバーパスの問題では、当面、所得に応じた負担軽減をはかり、分割払いを認めることを提案。段階的廃止で二〇〇七年度に完全廃止となるマル福については縮小・廃止をやめ、現行制度(六十七―六十九歳)を当面維持し、六十五歳からの制度に戻す方向で再検討することを求めました。
また、老人福祉手当(月五万五千円)の廃止で苦しんでいる介護度の重い高齢者や家族の負担軽減のため、都独自の介護手当を創設することを提案しました。
その内容は、日本共産党が三月都議会に提出した条例案や二〇〇五年度予算案の組み替え提案にも盛り込まれています。
国の年金課税強化による主な影響(年額)
(坂崎さんの場合の試算) 所得税 0円 → 49000円 住民税 0円 → 45000円 国民健康保険料 29880円 → 123800円 介護保険料 28900円 → 57900円 シルバーパス 1000円 → 20510円 合 計 59780円 → 296210円
※公的年金等控除の縮小、老年者控除の廃止、定率減税の縮小・廃止などが実行された段階(2008年6月以降)
自・公・民・ネット予算案に賛成
自民、公明、民主各党は、福祉を切り捨てる「福祉改革」をこぞって評価し、石原都政の予算に生活者ネットを含め、ことごとく賛成してきました。
二〇〇五年度予算案を審議した三月の都議会でも、自民、公明両党の質問は、傍聴者をびっくりさせるものでした。政府の負担増と石原都政の福祉切り捨てを批判して福祉の拡充を求める日本共産党に対し、都側の答弁を“援軍”に攻撃し、「石原都政は福祉を充実してきた」(自民)「都民要望に敏感に対応した予算」(公明)と、悪政をおおい隠す質問までしたのです。
この「オール与党」が石原都政と一体となって類を見ない福祉切り捨てを進めていることを、三月都議会は改めて浮き彫りにしました。
日本共産党をもっと大きく
渡辺都議の代表質問を傍聴した浜野淑子さん(64)=東京都足立区=は「石原知事と自民、公明などは、いっしょになって日本共産党の主張は間違っているといっていましたが、とんでもありません。渡辺都議は、私たちの願いをしっかりと取り上げてくれました。都民の立場で頑張る日本共産党がもっと大きくならないと、都政はよくならないと痛感しました」と話しています。
シルバーパス 都営交通(バス、地下鉄、都電)と民間路線バスの都内区間を自由に乗降できる乗車証。革新都政時代に始まり、七十歳以上の都民に無料(一部所得制限あり)で都が交付していました。石原都政は二〇〇〇年十月から東京バス協会が発行者となり、住民税非課税者千円、同課税者二万五百十円に全面有料化し、希望者本人が購入することになりました。七十歳以上の高齢者の利用率は七割から五割に激減。小泉内閣の年金課税強化で住民税が新たに課税されることで、千円から二万五百十円になる人は、七万七千人にのぼるとみられます。