2005年4月11日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
線路は文化、街づくりの核
北海道・ふるさと銀河線
住民に愛されて100年予算次第で存続可能
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北海道の第三セクター「ふるさと銀河線」(ちほく高原鉄道・北見市―池田町)が一市六町の沿線住民の願いに反して、道の資金提供の打ち切りで廃線の危機を迎えています。約百年前から沿線住民十五万人の足となり、百四十キロを走り続けてきました。鉄道を軽視した高橋はるみ知事の姿勢に怒りの声が広がり、沿線住民らは「なんとしても残したい」と粘り強く運動をすすめています。
三月二十七日、銀河線の存廃を決める関係者協議会で、副知事や沿線首長らの激論は二時間二十分にもわたりました。結局結論は出ず、北海道ちほく高原鉄道の取締役会にもつれこみ、多数決で廃止が決まりました。
知事が会議の前に副知事に「廃止」を指示していたことが明らかになり、「道民と地元の首長を愚ろうするものだ」と関係者から怒りの声があふれました。
存続を願う首長や市民団体は廃止の理由になっている毎年四億円の赤字を減らすための計画案を、道に何度も提出。二年前に始まった関係者協議会は、住民の思いと裏腹に、道の「廃止ありき」の方針で会議を重ねた結果になりました。
バス転換への具体的な議論も協議会でされていません。高校生の通学の定期代が高くなるとの懸念の声や、お年寄りの通院が不便になるとの声が広がっています。バスになっても一億円以上の赤字が試算されており、「観光客などを見込める鉄道に、バス転換に使う第一基金の四十八億円を使ってほしい」という地元の声もあがっています。
沿線住民らの「ふるさと銀河線存続運動連絡会議」は、あらゆる手だてをこうじてきただけに、知事の決断には納得がゆきません。地元での千四百人の集会や北見市、札幌市での集会では「道民の文化として残そう」と思いを一つにしてきました。
沿線自治体は、過疎化に歯止めをかけるために意欲的に「町づくり」をすすめてきました。主要な駅舎は、ホールやホテル、農業センターなどの複合施設として利用されています。銀河線は「町づくり」になくてはならないものとして住民は存続を呼びかけてきました。
道議会でも日本共産党の大橋晃、花岡ユリ子道議と自民党道議など党派を超えて、道に銀河線存続を要求。花岡道議は「道が予算配分の考え方を変えれば銀河線は存続できます。全国には廃止論を逆転して存続を決めた例がいくつもあります。あきらめずに存続のために頑張ってほしい」と激励しています。
「ふるさと銀河線存続運動連絡会議」顧問の中川功さんは「全国で鉄道の廃止問題がおきている。銀河線の存続の運動は、私たちだけの問題じゃない。駅は町づくりの核になる。線路をはがすわけにはいかない」と語ります。中川さんは新たに市民団体の立ち上げを計画しており、存続へ向けて粘り強い取り組みをしていくと決意しています。(北海道・岡田かずさ)
山田洋次、松本零士さんら激励のメッセージ
陸別町、北見市、札幌市で開かれた「ふるさと銀河線存続集会」には、歌手の加藤登紀子さん、さだまさしさん、松山千春さん、プロスキーヤーの三浦雄一郎さんなど多くの著名人から激励のメッセージが寄せられました。このうち映画監督の山田洋次さんと漫画家の松本零士さんのメッセージ(要旨)を紹介します。
山田洋次さん 北海道の鉄道は北海道に住む人々の歴史的な遺産であり、広々とした牧草畑を縫うローカル線、思い出がたくさん詰まった小さな駅舎やプラットホームのある風景は北海道の文化だと言っていい。鉄道を必要とする老人、障害者、学生のためにはもちろん、北海道の文化として、北海道に住む人たちの心の支えとしても、ぜひぜひこの鉄道を残していただきたいと思います。
松本零士さん ふるさと銀河線は、白い雪の中、真っ白な宇宙の中を走る鉄道というイメージです。交通手段として、鉄道は正確に時刻どおりに走れる大切な交通手段ですし、消えることなく永遠に走り続けてほしい。
和歌山・貴志川線 住民運動が存続の力に
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関西の私鉄大手「南海電鉄」が突然、貴志川線(和歌山市―貴志川町、十四・三キロ)からの撤退を表明して一年数カ月たった今年二月、初期投資と施設整備を県が負担し、経営は民間会社という「上下分離方式」(保有と運営の分離)による存続が決まりました。
貴志川線は、乗降客がピークだった一九七四年の約三百六十一万人から、減ったとはいえ二〇〇二年で約百九十九万人。中小鉄道の収支バランスの目安が輸送密度(一キロ当たりの一日の輸送人員)二千人以上といわれるなか、同線は二〇〇二年で三千百二十九人。採算可能が指摘される一方、同線と並行する道路は、たいへんな混雑で、近畿運輸局も「バス輸送への変更は難しい」と認める状態です。
貴志川線問題で昨年九月放映のNHKテレビ「ご近所の底力」に出演した住民らがよびかけ「貴志川線の未来をつくる会」が結成されました。同会の山本好延さん(73)は「二十五人で始まった会は六千人を超え、今も増え続けています。『運動は大変でしょう』と言われるのですが、楽しいですよ。『乗って残そう』が合言葉。存続が決まったこれからこそ、私たちにできることを大いにやろうと話し合っています」と述べています。
日本共産党は県、和歌山市、貴志川町の各議会で「鉄道がなくなれば渋滞はより深刻になり環境は悪化する。鉄道は利用者だけでなく地域全体に大きな便益がある」と存続を迫り、党支部・後援会が学習会を開くなど奮闘しました。(和歌山県・川崎正純)
岐阜市・路面電車 廃線後も再生の動き
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岐阜市などを走る名古屋鉄道の路面電車が三月三十一日、九十四年の歴史に幕を閉じました。
廃線となったのは、岐阜市内線、揖斐線、美濃町線(田神線を含む)の三路線で、総延長三十六・六キロ。揖斐線の尻毛(しっけ)駅近くの踏切には、「踏切廃止のお知らせ」看板が立てられ、警報機は黒いビニールシートで覆われ、線路内に入れないようにフェンスが立てられています。
岐阜市は、路面電車の必要性を説きながらも、路面電車存続に積極的な手だてを取りませんでした。他方、沿線住民や市民団体の間では、レール保存署名やマイレール運動(一口五千円で延長キロにちなみ、三万六千六百口の募金予約を集める運動)が起きたり、路面電車再生に向けた運営会社設立の動きもあります。
岐阜市長から諮問を受けて、市の総合交通政策について話し合ってきた市民交通会議でさえ、廃線に先立つ三月二十八日、協議結果の「中間取りまとめ」で、「将来における基幹公共交通軸として路面電車の必要性の是非を検討する必要があります」と報告。「路面電車が岐阜市の公共交通として必要であるのか否か、必要ならばどのようにするべきかを幅広く検討することが必要」と指摘しました。
日本共産党岐阜市議団の堀田信夫団長は「いまこそ、行政の積極的な支援が求められています。路面電車の再生を願う広範な人たちと連帯して、環境に優しいまちづくりに力をつくします」と話しています。(岐阜県・鈴木正典)