2005年4月10日(日)「しんぶん赤旗」
アジア・アフリカ・ラテンアメリカ
いまこの世界をどう見るか
21世紀地球の発展的な役割担う
日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ
連帯委員会創立50周年記念
不破哲三議長の記念講演
「アジア・アフリカ・ラテンアメリカ――いまこの世界をどう見るか」と題して九日、記念講演した日本共産党の不破哲三議長。最新のアフリカ史の研究も織り交ぜながらアジア・アフリカ・ラテンアメリカ(AALA)の世界の過去・現在・将来について縦横に語りました。
世界のすべての国民が
自国の主人公となる時代
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今年は、第二次世界大戦終結から六十年。この間に起きた世界の構造のもっとも大きな変化は、植民地体制の崩壊です。資本主義諸国が支配していたAALAは、独立した国ぐにの集団へと変わりました。
「世界のすべての人民が自国の主人公になり、例外なくすべての国民が国際社会に積極的に参加するという、新しい時代が始まったことは間違いない」。こう総括した不破さんは、人類社会の歴史に目を転じ、「資本主義以前には『先進国』による世界支配などは固定した形で存在しなかった」と語りました。
人類はアフリカに誕生して世界に広がり、定着した各地でそれぞれ自分の社会を発展させてきました。不破さんは、ヨーロッパで資本主義が発展する以前の十四―十五世紀の世界がどうだったかについて、日本、中東、インド、中国などのアジア諸国や、アメリカ大陸の国家や文明社会などを概括。つづいて、アフリカにも話をすすめ、二年前に北アフリカのチュニジア政権党・立憲民主連合の党大会に招待されてサハラ以南の多くの国ぐにの代表と会って交流するなかで、「アフリカの歴史を勉強して、この時代の発展を知ってびっくりした」と語りました。
というのも、十四―十五世紀、アフリカはイスラム文明の拠点となった北アフリカだけでなく、サハラ以南のアフリカ各地でも、四つの大河流域地帯(ニジェール川流域、ザイール川流域、ザンベジ川、リンポポ川流域、ナイル川上流域)を中心に多くの国家が生まれ発展していた時代だったことを知ったからです。
不破さんは、この歴史を裏付けるものとして、二〇〇四年までにユネスコの「世界遺産」に登録された六百三十四(自然・文化の両方登録二十三を含む)のうち、二百九十三がAALAの地域であることを紹介。
資本主義以前の人類社会で大きな比重を占めていたAALAの世界が「支配される国」としてくつがえったのは、十六世紀を転機に資本主義諸国が支配勢力として膨張を始め、十九世紀を経て、二十世紀初頭に完成したことがありました。その支配が崩壊したのです。
不破さんは「『先進国』の特権的な支配とは、人類文明の数千年の歴史のなかで、せいぜい二百年か三百年程度のごくわずかの時代を占めるだけ」と指摘。それに終止符が打たれたいま「人類社会はすべての国民がその地域の主人公となる本来の姿を、より高い段階でとりもどしたといってよい」とまとめました。
世界平和の問題でも
AALAの役割は大きい
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こうした構造変化は、世界の平和秩序の問題にも影響を及ぼしています。イラク戦争の是非をめぐる開戦前の国連での深刻な討論、大国の勝手な戦争を許さない平和のルールをめざす世界的な波はその現れです。
「歴史をふりかえるとこの波は、平和の世界秩序をめざす第二の波」と強調した不破さん。第一の波といえる第二次世界大戦直後の時期は、反ファッショ戦争で戦った五大国の協調がその最大のよりどころで、その後の米ソ対決で大国の関与する戦争に国連は口を出せませんでした。ところが第二の波には、最初の波とくらべて大きな発展があります。
発展の第一は、民族自決権、諸民族の主権・独立が世界秩序の大きな柱となっていることです。
国連憲章には、植民地体制の崩壊以前だったという当時の歴史的制約が反映し、植民地・従属国の人民の独立の権利という意味での民族自決権への言及はありません。民族自決権の原則を世界秩序の大原則のなかにもっとも太い字をもって書き込んだのは、戦後の時期に次々と民族の独立をかちとったAALAの解放運動であり、その展開途上で一九五五年に開かれたバンドン会議(アジア・アフリカ会議)でした。
不破さんは、同会議が国連憲章を具体化した平和十原則を確認し、すべての民族自決権の保障を浮き彫りにしたこと、会議五年後の一九六〇年の国連総会で採択された「植民地諸国、諸国民に対する独立付与に関する宣言」で、初めて他国民にたいする植民地支配が国連憲章に違反する不法行為だと規定され、植民地主義の急速かつ無条件な終結が宣言された歴史を跡付けました。
発展の第二は、超大国の横暴を許さない世界の構造変化が何よりの保障とも推進力ともなっていることです。その姿を不破さんは、AALA諸国五十億人が世界人口の約八割を占め、イラク戦争不賛成で決定的な比重をもったことで明らかにしました。
国連憲章にもとづく世界の平和ルールを擁護する点で日本共産党が、イスラム諸国の政府と一致点を確認してきたことを紹介した不破さんは「日本の外交としても、AALA社会の一員として、この世界で信頼と共感をえる活動が二十一世紀を展望していよいよ大事になる」と強調。日本が憲法九条を投げ捨て、アメリカの一国行動主義との運命共同体の道を選ぶことは、AALA社会の一員として二十一世紀に生きる道を決定的に誤らせることになると強く警鐘を鳴らしました。
日本共産党の野党外交が
なぜ受け入れられるのか
AALA諸国政府や政権党と交流を深めてきた日本共産党の野党外交の話に、来賓の非同盟諸国の駐日大使らも身を乗り出して聞き入りました。
不破さんは、外交では「力」や「金」ではなく、友好への熱意にくわえて、「道理」と「正義」こそが重要だと指摘。実際、日本共産党の野党外交が多くの国ぐにから受け入れられた根底には、自主独立、平和への道理、新しい平和日本への展望があるとのべました。さらに、内政不干渉の原則をきびしく守り、その国の独自の文化と歴史、社会発展の現状を尊重する態度をとってきたことを強調しました。
また、不破さんがAALA諸国側の事情としてこの国ぐにが平和と連帯の日本を強く求めているなかで、日本共産党の立場がその気持ちにこたえるものとなっているとのべ、さらに「共産党だから交流できない」といった頭ごなしの反共主義が世界から消えつつあると指摘すると、大きな拍手がおきました。
AALA世界に人類の
未来史につながる発展が
最後に不破さんは、昨年九月に北京で開かれた第三回アジア政党国際会議での印象や、ベネズエラなど新しい政治変革の波が連続して広がるラテンアメリカの発展を生き生きと詳述し、二十一世紀の大きな展望の問題について話を進めました。
いま地球上には大きく分けて、(1)資本主義がきわめて高度に発達した国ぐに(2)独自の道で社会主義に向かって進もうとしている国ぐに(3)植民地・従属国のくびきを断ち切り、経済の自立的な発展の道を切り開く努力をしている国ぐに(4)九〇年代はじめに旧体制の崩壊を経験し、大局的には資本主義への復帰の道をたどったが、独自の矛盾や困難にぶつかっている国ぐにが存在しています。
不破さんは「資本主義の存続の是非が問われる二十一世紀のもとでは、どの型に属する国ぐにのなかからも、社会主義への発展の動きが現れる可能性がある」と展望。AALA世界が困難な問題にぶつかりながらも、全体として新しい国づくりに活力をもって取り組む発展の時代を迎え、「現在の地球上でもっとも若々しい活力ある部分となっている。人類の未来史につながる多面的な可能性が豊かに存在し、発展するに違いない」と強調しました。
そのことを示す最近の動きとして、ベネズエラのチャベス大統領が、日本共産党の緒方代表も出席したラテンアメリカの国際会議(二月)で、ベネズエラ革命の社会主義的展望について語ったことを紹介しました。
こうしたAALA世界の過去、現在、未来について語った不破さんは、日本のAALA運動の発展を願うとともに、参加した各国大使館の方がたへのお礼のことばをのべ、拍手のなか講演をむすびました。