2005年4月10日(日)「しんぶん赤旗」

主張

派兵の「本来任務」化

自衛隊法改悪の危険な動き


 政府は、ミサイル防衛のための自衛隊法改悪につづいて、海外派兵を自衛隊の「本来任務」にするための自衛隊法改悪をめざしています。大野防衛庁長官は、与党の公明党と調整し今国会で、提出・成立させる構えをくずしていません。

 海外派兵の「本来任務」化は、「日本防衛」のための自衛隊から、アメリカの先制攻撃戦争に参加することが中心の「海外派兵隊」に根本的に変質させるものです。

憲法無視の与党論議

 自衛隊の「本来任務」は、「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛すること」(自衛隊法第三条)とされています。国連平和維持活動(PKO)や周辺事態における米軍支援は自衛隊法の「雑則」、イラクやアフガニスタンでの活動は「付則」で規定される「付随的業務」になっています。この自衛隊法の構造は、憲法の制約から生まれたものです。自衛隊が憲法違反の軍隊であることは明白であるため、政府はこうした批判をかわし、自衛隊の存在を正当化するために、「わが国を防衛するための必要最小限の実力組織であるから憲法に違反するものでない」(一九八〇年十二月五日政府答弁書)と説明してきました。このため、「日本防衛」以外の活動は、「雑則」「付則」扱いにしてきました。

 海外派兵を自衛隊の「本来任務」にするのは、“必要最小限の自衛組織”という政府の従来見解さえも踏みこえるものです。「防衛計画の大綱」は、「国際平和協力活動に主体的かつ積極的に取り組み得るものとする」と明記しました。「国際平和協力活動」の中心は、アフガニスタンやイラクのような米軍との共同作戦です。自衛隊法改悪は、「大綱」を具体化し、自衛隊がアメリカの先制攻撃戦争に参加することを常態化するものです。「日本防衛」と無関係の海外派兵は、従来の政府見解にてらしても明白な憲法違反です。

 憲法第九条をもつ日本の国際的役割の点からも重大です。憲法制定議会において吉田茂首相は、「世界に先立って戦争を放棄することに依って平和精神を徹底せしめる、世界に闡明(せんめい)せしめる」(四六年九月三日貴族院)と強調しました。自衛隊の海外派兵態勢づくりは、「平和精神」を投げすて、世界の緊張と危険を大きくするだけです。

 憲法違反であることが明白な海外派兵の「本来任務」化を、自民党だけでなく公明党も賛成していることは重大です。「防衛計画の大綱」についての冬柴鉄三幹事長談話は、「平和国家としての基本理念を堅持することができた」(公明新聞二〇〇四年十二月十一日付)とのべ、神崎武法代表も、「本来任務」に格上げすることに、「基本的に賛成」(公明新聞三月二十四日付)とのべました。公明党は、最近、慎重な態度といわれますが、「公明党が七月の東京都議選を控え、安全保障問題で突出した印象を与えるのを避けたため」(「毎日」七日付)との指摘もあります。「本来任務」化を「突出」と思うなら、やめさせる方向に、態度をはっきりさせるべきです。

懸念をつよめるだけ

 アジア諸国民は、憲法九条改悪の動きが侵略戦争美化論の横行と結びついていることに警戒感をつよめています。この流れのなかですすめられる海外派兵態勢づくりにもつよい懸念をしめしています。

 海外派兵の「本来任務」化のための自衛隊法改悪をやめさせ、憲法第九条を守り、平和原則をつらぬくことが重要となっています。


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