2005年4月8日(金)「しんぶん赤旗」

株主訴訟 厳しい要件

会社法改定案を批判

審議入りで佐々木議員


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質問する佐々木議員=7日、衆院本会議

 法制定以来の大幅改定となる会社法「改正」案の趣旨説明と質疑が七日、衆院本会議でおこなわれ、審議入りしました。

 同法案は、企業間合併の要件緩和や新たな会社類型の創設などを柱に、会社にかかわる法制を大幅に改定するものです。

 質問に立った日本共産党の佐々木憲昭議員は、コクド・西武鉄道の商法・証券取引法違反事件、三菱ふそうトラックのリコール隠しなど、重大な企業犯罪が相次ぐもとで、「いま問われているのは法令順守をはじめ企業の社会的責任を明確にする法整備だ」と強調。法案の内容について、佐々木議員は、従来の会社法制の規制を大幅に緩和し、利益配当決定の権限を株主総会から取締役会に移し、経営者をチェックする株主代表訴訟に厳しい要件を持ち込むなどの改定は、経営の自由度を拡大するもので企業経営の透明性と規律を高めることにならないとただしました。

 南野知恵子法相は、「これら大幅な規制緩和で弊害が生じることはない」などと答弁しました。


会社法「改正」案

佐々木議員の質問 (要旨)

衆院本会議

 七日の衆院本会議で、日本共産党の佐々木憲昭議員がおこなった会社法「改正」案についての質問(要旨)は次のとおりです。

 いま企業に問われているのは、あいつぐ企業犯罪の発生原因を明らかにし、コンプライアンス(法令順守)をはじめ企業の社会的責任を明確にする法整備。企業経営の透明性と規律を高め、国民や従業員による監視を強めることを通じ、企業に社会的責任を果たさせることではないか。

 第一に法案は、従来の会社規制を大幅に緩和し、利益配当決定の権限を株主総会から取締役会に移すなど、経営者の経営の自由度を大幅に拡大している。「無過失責任」とされていた取締役の責任を「過失責任」に後退させ、経営者の責任追及の手段である株主代表訴訟のハードルを引き上げる改悪では、企業犯罪が逆に増大するのではないか。

 第二に、グローバル化への対応で求められていた、集団訴訟などアメリカで一般投資家が事後的に経営者の責任を追及するための制度が、日本経団連の強い反対で実現しなかった。アメリカでは、エンロン事件などを契機に企業改革法を成立させ不十分ながらも不正を働いた経営者への罰則強化などを行っているが、日本では、大和銀行事件の株主代表訴訟での巨額の賠償判決を契機に、取締役の責任を引き下げる商法改悪を行った。さらに今回、株主代表訴訟に厳しい要件をもちこもうとしている。経営へのけん制を減らすのではなく、経営者へのチェック体制を確立すべきではないか。

 第三に、コクドと西武鉄道など持ち株会社・企業グループの責任が問われているが、日本の企業法制は、グループ全体としての経営支配を認めながら、企業責任については「親会社と子会社は別」とされている。そのため、親会社によって子会社が破産させられても、子会社の債権者や労働者は親会社の責任を問うことはできない理不尽な仕組みになっている。欧米では当然のルールである、親会社の責任を問う「会社結合法制」をなぜ導入しないのか。

 第四、ハンナン、武富士などの巨額脱税やコクドの租税回避が、なぜ許されてきたのか。法制上・行政上の問題がどこにあり、どう改善していくのか。

 今回、合同会社・LLC、有限責任事業組合・LLPといった新たな会社類型が創設されようとしているが、これが、大企業の課税回避のために活用されることになるのではないか。

 【政府答弁】

 南野知恵子法相 利益配当決定権限の改正は株主側の選択肢を拡大するもので、株主代表訴訟の改正は株主全体の利益をはかるという制度本来の趣旨にのっとったものだ。これら大幅な規制緩和で弊害が生じることはない。親会社の違法な行為で子会社が損害を受けたとき、債権者や従業員は民法などで損害賠償を請求できるので、法案ではその保護のための特別な制度は設けていない。

 谷垣禎一財務相 新しい制度が租税回避に利用されることのないように厳正、公平な執行につとめていく。


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