2005年4月7日(木)「しんぶん赤旗」

国会の視点

偽造カード問題 共産党が追及

補償は国際的常識

対策怠ってきた政府


 知らない間にキャッシュカードを偽造され、数百万から数千万円の預金が全額引き出されていた―こうしたカード犯罪が急増しています。被害者に対し銀行は警察に行ってくれといい、警察は「あなたが盗まれたのはカードのデータで、お金をとられたのは銀行だから銀行に被害届を出してもらいなさい」と門前払いする例さえあります。

 現状では被害者は何の落ち度がなくても補償を受けられません。預金者保護を求める世論が高まるなか、今国会で各党が取り上げていますが、各委員会での日本共産党の質問で問題点が浮かび上がっています。

被害者の保護は金融機関が負う

 第一に被害者に対する補償を銀行の責任で行うことは国際的常識だということです。

 佐々木憲昭議員の質問に対して政府の担当者は「主要国、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス等では偽造カードによる被害は、まず預金者に重大な過失または過失がない場合には基本的に金融機関が負担する」「預金者の過失の立証責任は(これらの国では)金融機関が負うルールになっている」(三月三十日、衆院財務金融委員会)と明確に答えました。欧米ではすでに七〇年代、八〇年代に現在のような対策がとられています。日本の対策の遅れは際立っています。

法制の整備に銀行業界が反対

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預金者保護法制定を求める集まりで国会議員に訴える被害者=5日、衆院第2議員会館

 第二にこうした犯罪による被害を政府は十数年前に予見しながら、対策を怠ってきたことです。その背景に銀行業界の反対がありました。

 一九八七年には当時の大蔵省がエレクトロバンキング専門委員会を設置して金融機械化にともなう問題を検討しますが、結局なんの対策もとりませんでした。

 その経緯について同委員会座長代理だった岩原紳作東大教授(現・金融庁の「偽造キャッシュカード問題に関するスタディ・グループ」座長)が「法制整備の検討に入ったが、銀行界の立法への反対に会ったため、平成七年(一九九五年)にわずかな約款整備を行っただけで、事実上法制整備の検討を終えている」と著書『電子決済と法』に書いています。

 吉川春子議員は三月十八日の参院総務委員会でこうした経過をあげ、「(対策が)なぜとんざしたか。銀行業界が、消費者保護の法制に猛烈な反対をしたからだ」と追及しました。

盗難・紛失含む被害者の保護を

 第三に保護が必要なのは、偽造キャッシュカードの被害者だけでなく、通帳・カードの盗難・紛失による預金引き出しなどの被害者も含まれるべきだということです。全国銀行協会は偽造カードに限って「銀行が原則補償」と表明しましたが、アメリカなど主要国の補償は盗難・紛失も含めたものになっています。そのためにも銀行の約款に任せるのではなく、預金者保護の立法措置が必要だという認識が確実に広がっています。

 既に民主党はそうした内容の法案を提出しており、日本共産党も同じ要求をしています。

 五日に国会内で開かれた預金者保護法制定を求める集まりで、預金の不正引き出しによる被害者たちは一致して、カードや通帳の盗難・紛失に対する包括的補償の立法化を求めました。出席した自民党の衆院議員も「個人的には約款対応だけでは苦しいと思う」と述べました。

 これだけの被害を目の前に、十数年前の政府と同じあやまちをくり返すのか、実効ある法律制定に踏み出すのか。各党の対応が問われています。

 (北村隆志)


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