2005年4月6日(水)「しんぶん赤旗」
ドイツ失業率
深刻12.5%
シュレーダー政権苦悩
「給付減」に労組から批判
三月のドイツの失業者は五百十七万人と三カ月連続五百万人を超え、失業率も12・5%(旧西独部10・3%。旧東独部20・6%)と深刻化しています。二月のシュレスウィヒ・ホルシュタイン州議会選挙で支持率、議席を大きく後退させたシュレーダー政権与党の社会民主党(SPD)は五月に最大の州ノルトラインウェストファーレンでの州議会選挙を控え、苦悩しています。
シュレーダー首相は、ドイツの産業の活性化で失業率半減をめざした「アジェンダ二〇一〇」提唱から二年になる三月十七日、この政策を補強する経済政策を打ち出しました。
高齢者雇用政策として五十歳以上の労働者を雇用する企業に賃金の半額を補助する政策(五十五歳以上は八年間補助、未満は三年間補助)や青年雇用奨励策、海外への工場移転を防ぎドイツの工場での生産を継続させるための法人税の25%から19%への引き下げ―が主な内容です。
冷え込む消費
輸出は伸びたものの国内消費は冷え込み、期待されていた経済回復がみられない状況も雇用状況に影を投げかけています。昨年秋から産業界で聞こえてくるのは、工場移転と労働者削減の話ばかり。同首相は三月末、産業界に「外国へ工場を移転することを考えるのではなく国内に投資して仕事をつくってほしい」(ビルト紙日曜版三月二十七日付)と訴えました。
失業者の増加は、失業保険制度の「改革」で統計方法が変わったことにもよっています。ドイツではことし一月、失業給付期間が終わった後に無期限で支給されていた「失業扶助」と日本の生活保護にあたる「社会扶助」が統合され「失業給付II」に一本化されました。就労ができない人には新たに「社会給付」の制度が設けられましたが、新制度ではこれまでの「社会扶助」受給者のかなりの部分が「労働能力がある」と認定され、「失業給付II」に移行し、新たに失業者として計算されることになりました。
この処置は、シュレーダー政権が「アジェンダ二〇一〇」で進める労働市場弾力化政策の一環で、来年実施される失業給付の現行三十二カ月から十二カ月(五十五歳以上は十八カ月)への短縮とともに長期失業者の就業促進を目的にしたものです。
ドイツ労働組合総同盟(DGB)などの全国労組は、失業者への援助を大幅に減額するこうした政策に強く反対してきました。特に、新設された「失業給付II」受給には配偶者の所得、所有財産や賃貸住宅の制限があることが問題になっています。
ベルリンで一万四千人の失業者を組織する「統一サービス産業労組」(ベルディ)の失業者相談員、オラフ・ツィガルスキさんは「事態は深刻だ」と語ります。
同氏によると、配偶者の所得が月千百ユーロ(約十五万円)以上だと「失業給付II」が受給できないため、「別れるかどうか迷っている」という深刻な例もあるといいます。
また「失業給付II」受給者は「一ユーロジョブ」と呼ばれる公園清掃などの仕事を半ば強制されることも問題となっています。「失業給付II」に加えて支払われる賃金は時給わずか一―二ユーロ。就労を拒むと「失業給付II」が減額されます。一方、「一ユーロジョブ」のため、学校など公共施設の塗装などの仕事がなくなるという事例も相次いでいます。(ベルリン=片岡正明)