2005年4月6日(水)「しんぶん赤旗」

主張

自民党改憲「要綱」

語るほど危険性があらわに


 自民党の新憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)が、改憲試案づくりのもとにする「要綱」を発表しました。

 同委員会は、「前文」「天皇」「安全保障及び非常事態」「国民の権利及び義務」「国会」「内閣」「司法」「財政」「地方自治」「改正及び最高法規」などに関する十の小委員会を設け、どのような「新憲法」にするかの検討をしてきました。今回の「要綱」は、小委員会ごとに論議をまとめたものです。

 そのなかには、意見の違いが出ているところもあります。しかし、自民党による改憲試案具体化の一歩であり、軽視はできません。

現憲法が排除したもの

 自民党の憲法改悪策動の最大の目標は、憲法九条の改変です。今度の「要綱」でも、「自衛軍を保持する」ことを主張し、「自衛軍は、国際の平和と安定に寄与することができる」と書いています。「自衛のため」の「自衛軍」といいつつ、「国際の平和と安定に寄与」という名目で、海外での武力行使に道を開こうとしています。日本を再び「戦争する国」にする危険な道です。

 それを推進するしかけが、随所に盛り込まれています。

 たとえば、「前文」には「国を愛し、その独立を堅持すること」を盛り込む。国民の権利・義務に関する部分では、個人の権利を規制するための「国家の安全と社会秩序を維持する概念」を明確にし、国民に「国防の責務」を負わせる。

 「国防」「国家の安全」を優先し、国民の権利や自由を規制する考え方が前面に出ています。

 また、「要綱」は、「社会的儀礼」の範囲内なら国の宗教的活動への参加を「許容」するとしています。政教分離原則の緩和です。「公金による玉串料支出、公務員等の殉職に伴う葬儀等への公金の支出などが考えられる」という注釈がついており、靖国神社公式参拝を「合憲」化する狙いがあることは明らかです。

 さらに「要綱」は、憲法前文に「明治憲法(大日本帝国憲法)、昭和憲法(現行日本国憲法)の歴史的意義を踏まえ」た「主体的」な憲法制定であることを明記せよとものべています。明治憲法を評価し、復活させる立場からの新憲法制定であることを示しています。

 しかし、日本国憲法前文は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」と明記し、国民主権の原理を宣言して、この原理に「反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除」しました。

 明治憲法は、天皇を神格性をもった絶対君主とし、国民を無権利状態におきました。為政者のやりたい放題の暗黒政治と侵略戦争の悲惨な結末は、明治憲法の破たんを示しています。その再現を許さないために、日本国憲法は「排除」を明確にしているのに、自民党は、それを覆し、明治憲法の方向に逆戻りさせようとしています。平和と民主主義に根本的に敵対する自民党の危険な体質が表れています。

改悪反対の声を大きく

 自民党は、異常な執念で憲法改悪を狙っています。しかし、改憲の内容を具体的に語るほど、反平和・反民主主義、反人権の本質が浮き彫りになり、国民の批判と反発を受け、矛盾を深める形になっています。

 九条を生かし、平和を守ることは、国民の命と人権、民主主義とくらしを守ることと固く結びついています。憲法改悪反対の声をさらに大きくし、改憲勢力を包囲しましょう。


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