2005年4月1日(金)「しんぶん赤旗」

イラクのアッバース君亡くなったけど

白血病増え、薬不足

名古屋

NGOが支援続ける


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アッバース君と母親のアヌワール・アルガド・マウサさん=昨年1月9日、名古屋大学病院

 「アッバース君が生きていることは、激増する白血病の子どもたちにとって希望だったのに…」。昨年、日本で白血病の治療を受けたイラク人の少年アッバース・アリ・アルマルキー君(6っ)がさる二月六日亡くなりました。アッバース君を支援してきたNGO「セイブ・イラクチルドレン・名古屋」の代表で弁護士の小野万里子さんたちは、突然の死を悲しみながら、今後も現場の医師の要請にこたえていく方針です。

 アッバース君はイラクのバスラで生まれ育ちました。父親は湾岸戦争で劣化ウラン弾を浴びたという兵士です。

名古屋大で治療

 白血病を発症したアッバース君は「セイブ・イラクチルドレン・名古屋」の支援で昨年一月に来日。名古屋大学付属病院で治療を受けました。

 十月に帰国したアッバース君は体も大きくなって髪ものび、亡くなる前日まで元気だったといいます。しかし、夜中に急に発熱し、病院に連れていったときには手遅れでした。詳しい原因はわかりませんが、感染症の可能性が高いといいます。

 「アッバースは幸せな子どもだった」。イラク人医師が小野さんに伝えてくれた両親の声です。アッバース君のように発病してから一年九カ月も生き、苦しまずに亡くなる例はほとんどないからです。しかし、小野さんは子どもたちが救いもなく死んでいく状態にした戦争を許せません。

戦争支持の事実

 小野さんは戦争が始まる直前にイラクを訪れました。「そのとき自分が見た人たち、子どもたちは戦争でどうなるのか」という思いから支援の活動を始めました。

 イラクにいる医師や友人からも日常的にメールが届きます。「日本はイラクに戦争をしたアメリカを支持しています。アッバース君のような子どもたちと、日本の私たちとが無関係だなんてとんでもない」

 伝えられるイラクの医療実態は悪くなる一方です。特別な薬だけでなく、常に必要な薬も不足しています。不衛生で抵抗力の弱い子どもが死んでいきます。

 小野さんたちはこれまでにバグダッド、ファルージャ、バスラといった都市部に支援をおこなってきました。さらに多くの地方にも支援を広げることにしています。アッバース君の両親に「幸せ」と感謝されたような医療が国内で普通にほどこされるようなイラクになることを願いながら…。

 (本田祐典)


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