2005年4月1日(金)「しんぶん赤旗」

東で 西で

働く人の願い前進


東京地裁

派遣の過労自殺認定

派遣先ニコンにも賠償命令

 業務請負会社に就職し、光学機器大手メーカーのニコンに派遣されて働いていた二男が自殺したのは「過労が原因」として母親が派遣元、派遣先両社を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決が三十一日、東京地裁でありました。芝田俊文裁判長は「主要な原因は業務の過重性にあった」として、安全配慮義務を怠った両社に対し、連帯して二千四百万円余を支払うよう命じました。被災者本人にも健康管理上の落ち度があったとして、損害額の三割を減額しました。

 訴えていたのは、岩手県一関市の上段(うえんだん)のり子さん(56)。二男の勇士(ゆうじ)さん=当時(23)=は一九九九年三月、会社の借り上げアパートで「ムダな時間を過ごした」と書き残し、自殺しました。

 勇士さんは九七年十月、名古屋市の業務請負会社「ネクスター」に就職。埼玉県熊谷市のニコン熊谷製作所に派遣され、半導体製造機械の最終検査を担当していました。十五日連続の昼夜二交代制勤務や度重なる休日出勤、派遣労働者として解雇の不安など精神的ストレスを抱えながら働いていました。

 判決は、「請負だから責任はない」としていたニコン側の主張を退け、派遣先にも「安全配慮義務の責任がある」との判断を示しました。

 原告代理人の川人博弁護士は「深夜労働の過重性や派遣社員という不安定雇用のきびしい実態を認めたもので、画期的な判決」といっています。


大阪高裁

偽装廃業はだめ

第一交通に賃金支払い命令

 大阪の佐野南海交通労組(自交総連)つぶしを目的にした会社の偽装廃業により、組合員五十五人が全員解雇された事件で、大阪高裁は三十日、親会社のタクシー最大手・第一交通(本社・北九州市)の不法行為を認定。五十五人に毎月合わせて一千万円の賃金支払いの継続を命じる決定を出しました。

 組合員解雇を無効とした大阪地裁岸和田支部の仮処分命令(二〇〇三年九月)にたいする第一交通の却下申し立てを、同高裁が退けたものです。

 同労組の組合員は〇一年、南海電鉄の株式譲渡で佐野第一交通の社員になりました。親会社の第一交通は労組を敵視。佐野第一交通が営業する大阪の泉州地域に別の子会社の営業所をつくり、〇三年四月に佐野第一交通を「廃業」、組合員を解雇しました。解雇された組合員五十五人は雇用継続と賃金支払いの仮処分を求めて裁判所に申し立てました。

 今回の高裁決定は、佐野第一交通の「廃業」を親会社・第一交通による違法な偽装解散と認定したもの。同労組は「この勝利決定を背景に一刻も早い争議解決に向けたたたかいを強化していく」との声明を出しました。

 労働法が専門の西谷敏大阪市立大学教授の話 労働組合をつぶすために会社を偽装解散させる典型的な事件です。地裁に続いて、偽装解散を法的に認めないという高裁の決定は、このような組合つぶしのやり方に歯止めをかけるもので、当然とはいえ大きな意義をもちます。


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