2005年4月1日(金)「しんぶん赤旗」
主張
BSE報告案
全頭検査の緩和に道理はない
内閣府の食品安全委員会が、「我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価」(案)を公表しました。国民からの意見募集を二十七日まで行い、報告書をまとめる予定です。
と畜場におけるBSE検査対象牛を「全年齢から二十一カ月齢以上に変更」しても、「人に対する食品健康評価(リスク)は、非常に低いレベルの増加にとどまるものと判断される」として、全頭検査の緩和を容認する内容を盛り込んでいます。
発見の可能性摘み取る
全頭検査は、牛肉の安全・安心を確保する有効な方法として、国民の信頼を得ています。
BSEの人への影響については未解明な部分が多く、全頭検査による予防措置で、食物連鎖からBSE汚染を排除していることは重要です。BSE検査の対象を月齢で線引きする科学的合理性はまったくありません。
健康への影響を「非常に低いレベルの増加」とする根拠の一つは、二十カ月齢以下の感染牛が世界でも日本でも確認されていないことが大きな要素となっています。当然、これらの月齢の感染牛が確認されれば、評価は変わらざるをえません。
もし、BSE検査を二十一カ月齢以上とすれば、それ以下の月齢の感染牛発見の芽をつみとり、健康評価の変更を不可能にしてしまいます。
日本では、全頭検査の実施で、二十一カ月齢や二十三カ月齢の感染牛を発見し、「BSE検査は三十カ月齢からでよい」とする“慣習”をくつがえす科学的成果もあげてきました。
全頭検査を維持して、より感度の高い検査方法の開発にも力を尽くし、二十カ月以下の感染牛が本当に存在しないのかどうか確かめる努力をすべきです。
「評価」(案)の結論は、厚生労働相と農林水産相の諮問に沿って、次の四点についてのべています。
(1)と畜場におけるBSE検査対象月齢の見直し及び検査技術に関する研究開発の推進(2)特定危険部位の除去の徹底(3)飼料規制の実効性確保の強化(4)BSEに関する調査研究の一層の推進
(2)―(4)については、対策や規制の強化・徹底を求めているのにたいし、(1)のBSE検査は緩和の方向での見直しです。
特定危険部位の除去や飼料規制を強化するのは、牛肉の安全性の確保を考えてのことです。だったらどうして、BSE検査は後退させるのか、説明がつきません。
全頭検査の緩和は、「今後、より感度の高い検査方法を開発する必要がある」(評価案)とした検査重視とも矛盾します。
“全頭検査は、緊急避難として導入されたが、沈静化した後は解除すべきだ”という意見があります。しかし、全頭検査を実施しているからこそ安全・安心が確保され不安が沈静化しているのではありませんか。
国は全頭検査の見直しの一方で、自治体独自の全頭検査に補助金を出す「経過措置」をとるとしています。政府自身の“不安”のあらわれです。
安心して食べるために
政府主催の全国各地の意見交換会では、BSEの科学的不確実性やBSEに対する不安、牛肉消費に対する懸念から全頭検査の継続を支持する意見が多く出されました。
国民が安心して安全な牛肉を食べるために、全頭検査を維持するよう求めます。