2005年3月31日(木)「しんぶん赤旗」

戦争賛成

2大政党ダンマリ

英総選挙まで5週間

反戦票のゆくえは?

予想される低投票率


写真
イラクからの英軍撤兵を訴えるロンドンでの反戦デモ・集会=19日(西尾正哉撮影)

 【ロンドン=西尾正哉】五月五日投票予定の英国の総選挙まで五週間。与党・労働党と野党第一党の保守党は勤労家族を対象にした政策を打ち出していますが、イラク戦争を強行した労働党、それを支持した保守党とも、最大の政治課題であるべきイラク戦争には触れないままです。反戦票の行方が注目されるとともに、投票率の低下が懸念されています。

休暇増売り込み

 ブレア首相は二十八日、大衆紙デーリー・ミラーに投稿。「国民の祝日」であるバンクホリデーを有給休暇とは別にとれるよう企業に義務づけ、有給休暇を年間八日間増やす公約を発表しました。これにより低所得者層と広範な女性が利益を受けるとブレア氏は強調します。

 労働党はほかに、好調な経済を背景にして最低賃金制の維持や仕事と家庭生活の両立推進など勤労家族向けの政策を押し出し。公共サービスが大幅に削減された保守党政権の時代に戻すなと訴えます。

 保守党は、年間の移民受け入れ数の制限を設定したり、欧州連合から距離を置き「欧州憲法」に反対を表明して保守層引きつけを図ります。ハワード党首が五歳以下の子どもを持つ夫婦に週五十ポンド(約一万円)の補助の支給を表明するなど、保守党も勤労家族にアピールします。

反戦デモ10万人

 両党がだんまりを決め込んでいるのがイラク戦争です。ブレア首相は「戦争は正しい選択だった」との態度を変えませんが、選挙運動では、この課題を避けて口にしません。戦争に賛成した保守党も、「イラクの大量破壊兵器の情報が正確に知らされていれば開戦に反対した」というものの、この問題で労働党を批判できません。

 十九日の反戦デモに十万人が参加するなど、英国民の戦争反対のエネルギーは健在です。反戦票の受け皿として注目されるのが、イラク戦争開戦に反対した自由民主党です。

 同党のヒューズ全国委員長は二十四日の記者会見で、「わが党は一致してイラク戦争に反対した唯一の党だ」と強調。戦争でイラクの脅威を口実にしたブレア首相の信頼性が選挙では問題になるとして、「反戦の党」を押し出して選挙をたたかうと表明しました。

 実際、自由民主党はこの間、下院補欠選挙や欧州議会選挙では労働党から離れた反戦票を集め、勝利してきました。ヒューズ氏によると、バーミンガムなど伝統的にイスラム教徒が多く労働党の地盤だった地方で、同党は「巨大な支持を受けている」といいます。

 しかし、「イラク戦争反対」以外の同党の政策に賛同できない有権者や、小選挙区制のために同党への投票が死票になるか保守党を利するとみる有権者も多く、自由民主党が大きく前進するとは必ずしもみられていません。

「高度な表明」と

 懸念されるのが低投票率です。ガーディアン紙二十三日付掲載の調査は、必ず投票に行くと答えた人が、投票率の低かった前回総選挙をも下回っていると指摘。特に三十五歳以下の37%が「興味ない」と答え、歴史的な低投票率になりそうだといいます。

 労働党元幹部で英左翼運動の重鎮、トニー・ベン氏は同紙十七日付の投稿で、「ほとんどの人は無関心どころではない。自分たちの意見を聞いてくれる者がいないことに怒っているし、政治家を信頼していないのだ。怒りと不信任は高度な政治的表明だ」と指摘し、「無関心」論を否定。イラク戦争や国連、貧困問題などで全選挙候補者の立場がわかるように民間団体が質問状を送って回答を公表するよう提案しました。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp