2005年3月31日(木)「しんぶん赤旗」

主張

下地島空港

軍事利用のもくろみは破れた


 沖縄県の伊良部町議会は、三月二十五日の臨時議会で、十六日採択した自衛隊誘致決議(賛成九、反対八)と二〇〇一年の自衛隊機訓練誘致決議(全会一致)を、ともに白紙撤回することを「決議」しました(賛成十六、反対一)。町民の半数にあたる約三千五百人が全議員を招いて住民説明会を開き、厳しい追及をしたため、町議会が白紙撤回せざるをえなくなりました。

非軍事を国が約束

 下地島空港は、沖縄本島から三百二十キロ西の伊良部町下地島にあります。日本の民間航空機パイロットの訓練飛行場として建設され、一九七九年に沖縄県が管理する第三種空港として供用が始まりました。

 下地島空港は、沖縄米軍がアジアに展開する途中にあるため、八二年以来、空港管理者である沖縄県の使用拒否を無視して、米軍機が「給油」名目で離着陸を強行しています。昨年までに三百二十二回使用しています。米軍再編でも、米軍と自衛隊の共同使用がとりざたされ、今年一月には米空軍中佐も訪れています。

 自衛隊の下地島空港利用をめざす動きも目立ってきています。昨年は陸上自衛隊関係者が四回も訪れました。〇四年度の「航空自衛隊防衛警備計画」のなかに、有事の際に、航空自衛隊が下地島空港を使用することを明記していることもあきらかになりました。中国の軍事的動向への備えを強調した「防衛計画の大綱」に沿って、沖縄西方の島々に自衛隊部隊を展開する動きの現れです。

 しかし、こうした下地島空港の軍事利用の動きは、下地島空港の軍事使用はしないという国の約束に反しています。本土復帰前の七一年八月、当時の屋良(やら)朝苗(ちょうびょう)琉球政府行政主席は、「下地島パイロット訓練飛行場」をつくるにあたって、「民間訓練及び民間航空以外の目的に使用させる意思はな」い、との確認を政府に求めました。非軍事平和が沖縄戦の教訓だったからです。丹羽喬四郎運輸大臣と山中貞則総理府総務長官は連名で、「異存のない」ことを確認しました。「軍事利用はしない」というのが政府の約束です。この約束を破ることは許されません。

 いったん自衛隊の使用を認めてしまえば、七一年の「屋良確認書」をほごにし、「軍事使用はしない」という国の約束をとりはらうことになります。日米の基地共同使用が広がっており、米軍使用につながることは明らかです。このもくろみを破ったことは、住民の力の大きさを示しています。

 伊良部の人たちが軍事利用に反対するのは、平和な島であってこそ、くらしがなりたち、命が守られるという強い思いがあるからです。軍用機が飛びまわれば、基幹産業の漁業は騒音や風圧で打撃を受け、ダイビングなどの観光も影響を受けます。

 稲嶺沖縄県知事も「軍事利用は認められない」と表明しています。

油断はできない

 誘致決議を白紙撤回させたからといって油断はできません。東京都三宅村議会は八三年十二月、大型ジェット旅客機就航のための空港整備を求める意見書を採択しました。しかし、米空母艦載機のNLP(夜間離着陸訓練)導入の口実を与えることから、住民の反発を受け、翌年一月に白紙撤回を決議しました。にもかかわらず、政府は、白紙撤回の決議を無視し、最初の決議を理由に、NLP基地化計画をすすめました。

 このようなくわだてを許さず、下地島空港の軍事利用を完全に封じ込めていくことが重要です。


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