2005年3月29日(火)「しんぶん赤旗」
主 張
個人情報保護
悪用をなくし安心なしくみに
国民の個人情報の保護を目的とした個人情報保護法が四月一日から施行されます。最近でも個人情報の流出が相次ぎ、国民の不安を招いており、企業や官庁は個人情報を守るために万全をつくすべきです。
国民は不安感じる
先日も東京ディズニーランドなどの年間パスポート購入者十二万人分の名簿が流出し、不審な勧誘にも使われていました。
自分の情報が、目的外に流用され、不審な勧誘や「振り込め詐欺」にも使われるのではないか、と国民は言い知れない不安を感じています。
個人情報保護法は、思想・信条など特別重要な情報の収集を禁止していないなどの欠陥がありますが、個人情報の適正な取得と利用、安全な管理、国民が関与する仕組みなどを定めています。自分の情報の開示や事実と違えば訂正を求め、目的外の利用などには利用停止・消去を求めることもできます。
憲法第一三条は「個人の尊重」を明記しており、国民のプライバシー権は、基本的人権の大事な柱です。国民は「自己に関する情報をコントロールする権利」を持っており、個人情報の厳格な保護は当然です。
この法のもとで、言論・表現の自由が侵される恐れがあることは軽視できません。
取り扱う個人情報が報道、著述目的の場合は、厳格な規制から除外されますが、その判断は主務大臣まかせです。大臣が恣意(しい)的な判断で、言論・表現の自由を侵すようなことがあってはなりません。
衆参両院の付帯決議も「表現の自由、学問の自由、信教の自由及び政治活動の自由を妨げてはならない」という法の趣旨を徹底することをうたっており決議を順守すべきです。
見過ごせないのは、個人情報の保護が求められる一方で、これとはまったく矛盾する個人情報の大量流出が放置されていることです。
それは住民基本台帳の閲覧制度です。同法第一一条は、住所、氏名、性別、生年月日の四情報は「不当な目的」に使用する以外は、だれでも閲覧できます。営利目的も禁止されていません。佐賀市の一昨年度閲覧結果では、ダイレクトメール送付が77%を占めます。
閲覧制度を悪用した少女わいせつ事件(名古屋市)、悪質なパソコンソフト販売で行政処分を受けた業者が閲覧制度を利用していた(東京)という問題も起きています。住民からは「個人情報がダイレクトメールに使用されている」「閲覧を制限してほしい」という声が地方自治体に寄せられています。
いまや住所、電話番号も「知られたくない個人情報」という人が、一九八五年の8%から二〇〇三年には43%(内閣府調査)に急増しました。「大切な個人情報を守ってほしい」という世論の変化があります。
すでに地方自治体では、独自に条例を制定したり、運用で大量閲覧を制限する動きが広がっています。
抜本的な改正を要請
自治体の戸籍事務の担当者でつくる全国連合戸籍事務協議会は数年来、総務省に閲覧制度の抜本的な改正を強く要請しています。
日本共産党は二十年前から国会で、個人情報は「非公開を原則に」と主張し、その後も再三、閲覧制限の要望を紹介し、国民のプライバシー権の保護を主張してきました。
問われているのは政府の姿勢です。個人情報保護に逆行するような状態を見直し、国民の不安をなくすことは当然です。