2005年3月28日(月)「しんぶん赤旗」

主張

基地の共同使用

返還要求をそらすくわだて


 大野防衛庁長官は、ライス米国務長官との会談で、「米軍基地の自衛隊との共同使用を検討することについて支持を得たい」とのべ、米軍基地の日米共同使用を要請しました。 基地の共同使用は、「地元住民の負担軽減」にならず、米軍を温存するだけです。

いつでも米軍が使える

 ブッシュ政権は、基地の共同使用の拡大を米軍再編の中心的課題の一つにしています。自衛隊基地を米軍が使うだけでなく、嘉手納基地(沖縄)や横田基地(東京)などの米軍基地に自衛隊を移駐させ使用させる考えです。同じ基地で寝起きをともにし、「ともに戦術を発展させ、ともに訓練し、共同作戦をおこなえるようにする」(ファイス米国防次官)ことがねらいです。イラク戦争のようなアメリカの先制攻撃戦争で、自衛隊が米軍とともにたたかえるよう強化するためです。

 大野防衛庁長官がいう米軍基地の共同使用も、米政府の共同使用方針に沿うものです。同時に、管理権を自衛隊に移すことで米軍への国民の批判をそらしつつ、いつでも米軍が使えるようにすることで米軍基地を温存するねらいがあります。

 戦後六十年もたつのに、首都東京をはじめ全国に占領時代からの米軍基地を存続させていること自体、異常なことです。

 とりわけ、沖縄の米軍基地は、米軍が全面占領のさい沖縄県民から「銃剣とブルドーザー」で奪い取ったものです。大野長官が「歴史の中で沖縄で展開する意味、重み、沖縄の負担を考えないといけない」(三月十八日 日本テレビ)とのべたのは当然です。米兵による少女暴行事件や沖縄国際大学への大型輸送ヘリ墜落事故など、重大な事件が後を絶たず、「基地返せ」「米軍は帰れ」の声が大きくなっています。返還を求められている普天間基地にかえて、辺野古沖に新基地をつくる計画も事実上頓挫しています。

 米軍基地への批判、返還要求を、共同使用方式でそらそうというやり方は、過去にもありました。たとえば、一九六八年の米軍東富士演習場の自衛隊移管です。戦後、東富士演習場を接収した占領米軍は、農民の耕作や植林を全面禁止にしました。このため、演習場の返還運動が噴出しました。窮地に立たされた政府がとった措置が、米軍から自衛隊に移管しながら、年間二百七十日間、米軍に使用させるという密約でした。米軍が必要なときに必要なだけ使用できる保証を与えたのです。

 一九六〇年九月八日の第一回日米安保協議委員会で小坂外相(=当時)は、「防衛庁に移管されれば、演習場は自衛隊の訓練の必要のために保持していると日本国民に納得させることができる。政府としては大いに助かる」と本音をもらしました。

 共同使用方式のもとで、米軍は現在も、専用演習場と変わらない使用をつづけています。

 東富士演習場の事例は、共同使用は結局、米軍の存続を保証するものでしかないことを示しています。

基地撤去、安保廃棄を

 米軍基地は沖縄県民をはじめ基地周辺の住民を苦しめてきました。しかし、日米両政府には、米軍兵力の削減や基地の縮小・撤去を交渉する姿勢はまったくありません。それどころか、米政府は、日本の基地を世界を対象にした先制攻撃戦争の足場として強化しようとしています。

 基地の縮小・撤去を要求し、その根源である日米安保条約の廃棄をめざすことが重要となっています。


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