2005年3月27日(日)「しんぶん赤旗」
福島 ダム受注ゼネコン
知事親族会社に融資
返済時 下請けが担保物件買う
佐藤栄佐久・福島県知事が筆頭株主となっている知事親族会社が、福島県の大型ダム工事を受注した大手ゼネコンなどから受注後に4億円の融資を受けるなどの異例の関係を持っていたことがわかりました。融資返済のさい知事親族会社は、担保の土地をこのダム工事下請け業者に買い取ってもらっていました。知事は親族会社の経営には「ノータッチ」と弁明しますが、あまりの異例な関係に政治姿勢が問われます。
| ||
|
この親族会社は、紳士服製造販売会社・郡山三東スーツ(安達郡本宮町)。同社の発行株六万六千株の約42%を佐藤知事が保有。社長には知事の実弟の祐二氏が就任しています。
同社に融資などをしていたのは、大手ゼネコン・前田建設工業(東京・千代田区)。前田建設工業は二〇〇〇年八月、県発注の大型ダム・木戸ダム(楢葉町)の本体建設工事を共同企業体(JV)の幹事社として二百六億円で落札、受注しています。
親族会社は、同県郡山市内に本社工場を持っていました。この土地登記簿によると、前田建設工業はダム工事受注から約半年後の〇一年二月、親族会社に二億円の借り入れ保証をしています。
■計4億円
さらに一カ月後の〇一年三月、前田建設工業はこの土地を担保に年利2・5%で二億円を融資。同年七月には、前田建設工業の子会社、光が丘興産(東京・千代田区)も同じ土地を担保に二億円を融資しました。ダム工事受注から一年以内に計四億円が親族会社に融資されたことになります。
その後の〇二年八月、親族会社は一連の融資の担保となっていた本社工場の土地を三重県桑名市に本社を置く水谷建設に売却しました。水谷建設は前田建設工業が受注した大型ダム工事の一次下請け業者でした。
親族会社は同建設への土地売却と同時に、前田建設工業などからの約四億円の融資を返済しています。
知事は、前田建設工業が受注した大型ダム工事の発注者。前田建設工業が同社に融資した〇一年当時、知事は同社の取締役でした。
■割引販売
大型公共工事受注企業と知事親族会社がここまで密接な関係にあるのは異例のこと。
佐藤知事の説明責任が問われますが、本紙の取材にたいし、知事直轄広報グループは「会社の経営については一切ノータッチ。土地を売る売らないも報告はなかった」との知事の見解を示すだけでした。
この親族会社はスーツをつくっていますが、中堅ゼネコンの営業担当者は「福島県の公共工事にかかわる建設会社のなかには、知事親族会社のスーツを買っている人もいる」と語ります。前出の水谷建設は、「社内で三東スーツが市価より割引販売された事実はある」と話しています。
◇
前田建設工業の話 お答えを控えさせていただきます。
水谷建設の話 購入した土地は商業施設の開発を前提にしたもので、それ以外のことを考慮したり、思惑をもって購入したものではない。
郡山三東スーツの佐藤祐二社長の話 大きな土地なので、いろんなゼネコンが開発話を持ってきた。前田建設工業、水谷建設もそのひとつだ。