2005年3月27日(日)「しんぶん赤旗」

イラク足踏み

政府発足せず/絶えない犠牲者


 一月末に暫定国民議会選挙が実施されたイラクでは、二カ月近くがたったいまも政府が発足せず、足踏み状態がつづいています。一方で武装勢力の攻撃や、米軍・イラク政府軍との戦闘も激化し、主権と独立を求める国民の不満が高まっています。(カイロ=小泉大介)


 暫定国民議会選挙(定数二百七十五)の結果をうけ、三月十六日に議会が招集されました。しかし、各政治勢力代表の演説が行われたものの、移行政府の選出問題は協議されませんでした。これ以降、現在まで議会は開かれていません。

 足踏み状態が続く主な原因は、選挙で過半数の議席(百四十議席)を獲得したイスラム教シーア派政党連合の「統一イラク同盟」と、第二勢力(七十五議席)となったクルド人政党連合「クルディスタン同盟リスト」の間の連立交渉が難航しているためです。

 交渉では、クルド側が、北部の油田地帯、キルクークのクルド自治区への帰属を要求するとともに、数万人といわれるクルド民兵組織ペシュメルガの国軍への編入に難色を示しているとされます。政府のポストでは、シーア派政党ダアワ党幹部のジャファリ氏が首相職に、またクルド愛国同盟のタラバニ議長が大統領に就任することで合意していますが、クルド側はいくつかの主要閣僚のポストを要求しています。

 クルド側は、キルクークに住んでいた多数のクルド人が旧フセイン体制により追放されたことに不満を抱いています。こうしたことから将来の独立も視野に入れ、民兵組織は維持しておきたいとの思惑があります。

 こうした状況についてイラク国民の間では「われわれは命をかけて選挙で投票したのに、政治家は国の将来を考えるのでなく政争に明け暮れている」との批判が高まっています。

 シーア派の最高権威であるシスタニ師は二十一日、「新政府発足の遅れは国民の生活に害を与えるもので遺憾である」と表明しました。

 一方、米軍、イラク政府軍と反政府武装勢力との間の戦闘が激しさを増し、二十日には首都バグダッドで銃撃戦により武装勢力二十四人が死亡しました。二十二日には米軍の支援を受けたイラク政府軍が、バグダッド北方約二百キロで武装勢力の訓練場を襲撃し、武装勢力八十五人を殺害したとされます。

 武装勢力の側も二十四日、西部ラマディ周辺で二度の自爆攻撃を実行。イラク警官ら十五人が死亡、二十三人が負傷しました。

 二十五日には、バグダッドの米軍基地で働くイラク人女性五人が車の中で銃撃されて死んでいるのが発見されています。

 また二十四日、北部モスル西方で、クルド民兵とイラク警察部隊との間で銃撃戦が起き、警察官七人が死亡するなど、民族間の対立の顕在化が懸念される新たな事態も発生しています。

 「統一イラク同盟」との交渉にあたっているクルド勢力幹部は二十五日、「二回目の国民議会が二十九日に招集される、それまでには連立に関する協議も合意に達するだろう」と述べています。


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