2005年3月27日(日)「しんぶん赤旗」

主 張

無年金障害者訴訟

憲法逆読み高裁判決に抗して


 血も涙もないとはこのことか。

 学生時代に障害を負いながら、国民年金への未加入を理由に無年金のまま放置されている元学生が、救済を求めている裁判の控訴審で、東京高裁が出した判決のことです。

 一審の東京地裁判決は、国の責任を認め、賠償を命じていました。ところが、高裁判決は、原告の請求をいっさい認めず、「過去の無年金者をどう取り扱うかは国の裁量の範囲内で、さかのぼって救済する義務はない」としました。国の責任をまったく認めない判決です。憲法を逆さまに読んでいるとしか思えません。

自己責任を押し付ける

 無年金障害者が生み出されたのはなぜでしょう。一九八五年の国民年金法改定で、二十歳未満で障害を負った人には障害基礎年金を認める一方で、二十歳以上で障害者となった未加入学生には不支給にしたことが問題でした。

 八五年当時は、二十歳以上の学生の国民年金加入率は1―2%にすぎません。その点について、高裁判決が、「学生の関心が低かったことも理由だ」としていることは、まったく実情を無視しています。

 圧倒的多数の未加入学生に、自己責任を押し付ける高裁判決は、許しがたいものです。

 原告が、障害で失った経済力の年金制度による保障を求めたのにたいしても、高裁判決は「障害で働けなくなることへの備えは、本来各個人か扶養者がすべきだ」とのべました。何と冷たい判決でしょう。

 未来ある学生時代に重い障害を負ったという不幸の上に、障害基礎年金を受給できない苦しみ。国の調査でも、無年金障害者(身体障害)の約四割が年収五十万円未満です。障害者の自立と社会参加を実現するために、障害基礎年金の支給を保障することは当然です。

 一審の東京地裁判決は、「無年金学生に国が立法措置をしないで放置したのは、法の下の平等を定めた憲法一四条に違反する」と断定し、国と国会の責任を明らかにしました。

 つづく新潟地裁(昨年十月)、広島地裁(今年三月)も、違憲判決を出しています。

 しかも、広島地裁判決は、初めて障害基礎年金の不支給決定取り消しを国に命じました。一九八九年改定前の国民年金法が、二十歳以上の学生を強制適用の対象から除外した上で二十歳未満と同様の無拠出制年金を設けなかったことが「憲法一四条に違反する不合理な差別であり違憲であった」との判断を示しました。

 三度の違憲判決にこそ合理性があり、現実を動かしています。

 四月一日から施行される“無年金障害者救済法”(特別障害給付金制度)も、東京地裁判決を受けてつくられ、昨年十二月、国会で成立しました。

 国民年金の任意加入の時代に未加入だったために、障害基礎年金を支給されていない障害者(元学生と、厚生年金・共済年金加入者の配偶者)が対象です。障害の程度によって、月額四―五万円を支給する制度です。障害基礎年金に比べ、額が少ないなど、不十分な点も残しています。

年金で暮らせるように

 無年金障害者問題の解決を求める世論と運動は、大きく広がっています。東京高裁の判決を不当として、原告は上告する方針です。

 全国各地の地裁と高裁で審理が行われています。三度の地裁の違憲判決を力に、すべての障害者が年金で安心して暮らせるようとりくみをつよめていきましょう。


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