2005年3月25日(金)「しんぶん赤旗」
大阪市職員
「厚遇」
ぜったい変や
大阪市役所の長年にわたるヤミ年金・退職金、カラ残業、特殊勤務手当などの職員「厚遇」問題が市民の怒りを呼んでいます。「厚遇」問題とは何か、その背景、市議会で明らかになった大阪市労働組合連合会(市労連=連合に属する大阪市職員労働組合など七組合)と市当局とのなれ合いの実態などについてみました。
(嶋田昇、生島貞治)
一方で福祉冷遇の予算案
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「民間は金がなければ給与も退職金も賞与も出ない。大阪市は財政破たんしているのに税金を食い物にしている」。大阪市役所労働組合(全労連・自治労連加盟、大阪市労組)が開設しているホームページにはさまざまな怒りの声が寄せられています。
カラ残業は、残業をしてもいないのにしたことにして残業代を受け取るというもの。この労使のなれ合いによる不法行為は、市内の二十四区役所と本庁の二十五局中二十局で発覚。市の会計管理検討委の調査で二〇〇三年度九千件以上ありました。二〇〇四年度(四月から十月までの七カ月)は、約五千五百件あったことが明らかになっています。
大阪市の職員数は約四万八千人。このうち同市は、係長級以下の職員約二万三千人に制服の名目で一人当たり三万数千円相当のスーツを支給していたことも判明。「税金を私物化している」と市民から批判があがっています。
また、条例にもとづかないヤミ年金・退職金の積み立てのために、市は一九九三年から十一年間で約三百四億円を職員互助組合に支出していました。退職時に上限四百万円が支給されます。
その一方で、大阪市は市民に重い負担を負わせる予算案を提案し、自民、公明、民主各党などの賛成で成立をねらっています。
市の二〇〇五年度予算案は、生活保護世帯への夏・冬の見舞金の廃止や、障害者作業所、学童保育への補助金の据え置き、公立保育所の民間委託(新たに四カ所)などを盛り込んでいます。
大阪市阿倍野区の主婦、石谷尚子さん(44)はいいます。「私は小学生が二人、中学生が一人います。教育費の負担増で生活費の切り詰めを余儀なくされています。公務員も生活がありますから、必要な給料は払われて当然だと思いますが、ヤミで手当を支払うというのは絶対おかしい」といいます。
住吉区で親子二代にわたり、おかき屋さんを営んでいる北山修三さん(62)は「共産党一党だけが野党で、あとはみんな市長の与党という市議会だからまともにチェックできないのではないか。市の幹部、労働組合の幹部など関係者は辞めなくてはいけないと思う。市長も辞職すべきです」といいます。
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労使なれあい「中之島一家」
大阪市はヤミ年金・退職金にあてる掛け金の大部分を、市職員互助組合に支出していました。二〇〇三年度は交付金として約四十五億円を支出。このうち二十三億六千万円がヤミ退職金・年金の原資となりました。
この原資の予算・決算を労使で議決していたのが、大阪市職員厚生事業協会です。同協会は一九八八年七月十八日に設立。規約によると会長は市総務局長を、理事長は市労連委員長をそれぞれあてます。
三月の大阪市議会で日本共産党が示した大阪市厚生事業協会の議事録(昨年七月二十二日)は、最後に「事務局」の発言で「各資料の取り扱いにつきましては、理事会・評議委員会限りということで、くれぐれも情報管理の程よろしく」とあり、ヤミの会議であることを物語っています。
「労使なれあいの『中之島一家』」といわれる、こうした癒着を生む背景には、歴代市長がすべて助役から就任する「世襲路線」があります。一九六三年いらい五代にわたって続いています。
自、公、民が支える市政
「中之島一家」というのは市役所が同市中之島にあるため。市長選になると市労連と自民、公明、民主の「オール与党」がともに前助役を推し、市長に当選させてきました。
自民党議員からも「市労連が推薦母体・団体、支持団体の中核となって市長選を取り仕切ってきた。それゆえ、歴代の大阪市長は程度の差こそあれ、労働組合には頭の上がらない状態」だという発言がでるほど(一月二十七日の市議会財政総務委員協議会)。
ヤミ退職金・年金は一九九〇年ごろ、当時の市と市労連の幹部がひそかに決めたもの。福利厚生などの名目で予算にもぐりこませました。その予算案に日本共産党以外のオール与党はすべて賛成してきました。
不当な公金支出にたいし、市民団体の「大阪市をよくする会」や「おおさか市民ネットワーク」、市役所労働組合などは、その是正と市政改革の提言をしています。
助役出身の市長(敬称略)
中馬 馨 63年〜71年(急死)
大島 靖 71年〜87年(4期16年)
西尾正也 87年〜95年(2期8年)
磯村隆文 95年〜03年(2期8年)
関 淳一 03年〜
市長の責任問う
日本共産党市議団 不正の根絶要求
日本共産党大阪市議団(姫野浄団長)は、職員「厚遇」について、条例にもとづかない公金支出は全容を公表し、市民的な立場から精査・検討して、不要・不当なものはただちに廃止するよう要求。カラ残業問題の徹底糾明とともに不正受給者には、返還させることなどを市長に申し入れました。
再発防止として、(1)超過勤務を管理者がきちんと記録・管理する(2)市政にかかわるすべての情報を公開する(3)関係する委員会に市民や議会の代表をいれること―などを主張。市長みずから責任を明らかにするよう求めています。