2005年3月24日(木)「しんぶん赤旗」
堤義明容疑者を起訴
西武鉄道・コクドも
証取法違反
西武鉄道株事件で、東京地検特捜部は二十三日、証券取引法違反罪で前コクド会長堤義明容疑者(70)と法人としての西武鉄道、コクドを起訴しました。堤容疑者がグループ内の意思決定に絶対的な力を持ち、不正を主導したと判断しました。
堤容疑者は、「有価証券報告書の虚偽記載を公表すると、株価下落や上場廃止になると思い、隠して株を売った。責任は非常に大きいと認識している」と起訴事実を全面的に認めています。
個人とともに法人も処罰する両罰規定で、西武鉄道は虚偽記載、コクドはインサイダー取引で起訴されました。
起訴状によると、堤容疑者は前同鉄道社長らと共謀、昨年六月二十九日、約64%だったコクドの株保有比率を約43%と偽って西武鉄道の同三月期の報告書に記載し、提出しました。
さらに、同五月二十五日、前コクド専務の報告で長年の虚偽記載という「重要事実」を把握。事実公表前の同九月九日―二十八日の間、コクド所有の鉄道株約千八百万株を約二百十六億円で十社に売却しました。
特捜部は前コクド専務(67)ら側近幹部は関与が従属的として、立件を見送り、民事訴訟の原告弁護団が告発した元西武鉄道社長(69)は起訴猶予、前同社社長(自殺)は不起訴にしました。
解説
政界との癒着にメス入れよ
今回の起訴で、東京地検は一連の捜査を終了するといわれています。しかし、堤容疑者と政界との癒着や脱税などの疑惑解明は残されたままです。
政界との関係では、堤容疑者が株支配で君臨してきた西武(コクド)グループから自民党・国民政治協会への献金はこの十年で九千九百八十万円に上っています。
表の献金以外にも、コクドの本社があった東京・原宿には多数の政治家秘書が盆暮れに小遣いをもらいにいったり、自民党総裁選では赤坂プリンスホテルに選対事務所を置かせるなど、有力政治家にさまざまな便宜を図ってきたのはよく知られています。
コクドの常勤監査役が事務担当者をつとめる政治団体「奉仕会」は、派閥の領袖など有力政治家のパーティー券を購入していました。
西武グループがリゾート開発を進める上で大きな役割を果たしたリゾート法(一九八七年成立)。同法を推進した議員連盟の会長には、堤容疑者と親しい関係だった小渕恵三元首相が就任、百五十人をこえる自民党議員が加盟していました。
これらの政界との癒着には国会での追及もふくめ、これからの課題です。
脱税問題では、すでに国税当局が税務調査に着手しています。堤容疑者やその関係者が自宅のように使っていた港区西麻布や杉並区の土地や建物を、コクドや西武ゴルフから格安の賃料で借りていました。
コクドの脱税が長年見逃されてきたのは、堤容疑者の政界への大きな影響力抜きには考えられません。政界との癒着にメスを入れない限り、国民の納得は得られないでしょう。 (橋本 伸)